おうちを買う前に知っておきたい!「住宅購入や住居に関する税制・法律・手続き」第5回
日々の生活で大切な三大要素の衣食住。おうち時間を充実させるため、よりよい「住」環境を求めて住宅の購入を検討している人もいるでしょう。
住宅購入は人生の中でも指折りの大きな買い物です。そのため費用を少しでも抑えたいと考えるのは当然のことでしょう。
国は、良質な住宅取得を促進することで景気回復を図るとともに、環境性能などの優れた住宅の普及拡大を推進しようと、様々な制度で住宅購入を後押ししています。ですから、どんな制度があるかを知り、自分の場合は何が使えるか、どのような手続きをしていけばよいかをこのシリーズで押さえていきましょう。
親から子へ、二世代で考えたい住宅購入
第5回は「親の援助を受けるときや二世帯住宅を建てるときに関係する制度」について、ご案内します。
住宅は、人生で一番大きな買い物と言われるだけに、親からの援助を受ける方、一緒に二世帯住宅を建てることを検討されている方もいらっしゃるかもしれません。住宅購入を資金面であきらめないよう、比較的裕福といわれるシニア世代から、現役である子や孫の世代へ資金の移動を可能にする優遇制度があります。相続税が絡むものもありますので、相続発生時に知らなかったとならないよう、概要を事前に把握しておきましょう。
住宅取得の贈与税が非課税になる制度
「1月1日から12月31日までの期間」に、個人が贈与された財産の合計額が基礎控除の110万円を超えた場合、贈与税が課されます。ただし、生計を一緒にする家族の生活費や教育費などとして渡されたお金ならば、不自然に多額でない場合、贈与税の対象ではありません。
そして、贈与されたお金が110万円を超えたとしても、両親や祖父母などの直系尊属から、子や孫に「住宅を取得するための資金」を贈与した場合には、贈与税の軽減措置があります。
住宅新築のための契約の締結が2023年12月までに行われた場合、耐震・省エネなど一定基準を満たす住宅1,000万円まで、それ以外の住宅は500万円までが、 直系尊属から子や孫に贈与をしけたときに非課税になります。また、2022年4月1日より、成年年齢の民法改正により、贈与を受ける人の年齢が20歳からではなく、18歳から可能になりました。
贈与税が非課税に
制度名:住宅資金贈与の非課税措置 |
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【概要】
また、2022年度の改正より、中古住宅の場合の築年数要件が廃止され、1982年1月以降の新耐震基準に適合している住宅であることが要件に追加されています。
【参考リンク】 |
相続時まで繰り延べできる!
なお、贈与税は、1月1日から12月31日までにもらったお金に対して税金がかかるのが基本と述べましたが、この計算方法を「暦年課税」といいます。また、贈与の方法においては、暦年課税とは別の納税方法も認められており、それが「相続時精算課税制度」です。相続時精算課税制度を利用した場合、暦年課税は利用することができない点には注意しましょう。
相続時精算課税制度は、60歳以上の親から18歳以上の子供への贈与について、2,500万円の控除枠が使えるものです。とはいえ、毎年2,500万円の控除が使えるわけではありません。複数年・複数回数にわたって贈与されても、合計で2,500万円の枠内であれば、贈与税はかかりません。2,500万円を超えた場合には、一律20%の贈与税額が計算されます。
ただし、この相続時精算課税制度はその名のとおりで、贈与されたお金は、相続時に精算がされることになります。つまり、贈与時の評価額で、相続財産に加算されます。贈与時点は贈与税の負担はないですが、課税時期を相続時に先送りする仕組みには注意しましょう。
また、税制改正により、相続時精算課税制度を使用しても、2024年1月からは1年間の贈与されたお金から基礎控除額110万円を控除できるようになりますので、利用する際はよく調べましょう。あわせて、暦年課税に関しても、相続開始前の「3年以内の贈与」ではなく、「7年以内の贈与」から相続財産に加算されるように変更になりましたので、注意が必要です。
とはいえ、この制度は、贈与税の大きな負担をやわらげるうえに、親世代の資産を現役世代にとって「今、活きるお金」として有効活用し、住宅購入といった大きな買い物を実行しやすくしてくれるでしょう。
制度名:相続時精算課税制度 |
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【概要】 |
二世帯住宅を建てるときに知っておきたい制度
相続が発生して自宅が相続税の対象になった場合、納税額が多額になり、自宅を手放さなくてはならない可能性があります。そうなってしまっては、残された家族(遺族)は生活していくことが難しくなることでしょう。そこで、遺族の生活の基盤を維持するのに必要な財産を守るための制度があります。小規模宅地等についての相続税の課税価格を特別に計算する制度(小規模宅地等の特例)を知っておきましょう。
この制度は二世帯住宅で同居していた場合のみ適用されるわけではありませんが、亡くなった方と同居している場合が該当しやすく、親と一緒に二世帯住宅を建てる方は制度の概要をおさえたほうがよいでしょう。
どのような制度かというと、亡くなった方(被相続人)と同居していた配偶者や家族は、住んでいた土地の相続税の評価額は、330㎡まで80%減額、つまり、適用前の評価額の20%の金額で評価されます。実際の適用要件は複雑にはなってきますが、二世帯住宅を検討している場合は、この制度で土地の評価額が下がることを知っておくと、相続税の対策になるでしょう。
相続時の二世帯の土地はどうなる?
制度名:相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例) |
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【主な要件】 |
公開日:2022年08月26日
更新日:
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八木陽子(やぎようこ)
(株)イー・カンパニー代表、ファイナンシャルプランナー
1級ファイナンシャル・プランニング技能士、CFP®、キャリアコンサルタント、キャリアカウンセラー(CDA)
15年以上の仕事実績と二児の母としての消費者の視点から、子供から大人まで分かりやすく「お金」「ライフプラン」「キャリア」を伝える。金融商品は一切販売しない立場から、一貫して顧客に寄り添う形をとる。共著に「ゼッタイ後悔しない!家の購入技200」(スタンダーズ株式会社発行)など、著書多数。