【最新】長期優良住宅とは?メリット・デメリット、申請費用、減税・税制優遇制度、条件、申請の流れを解説

【最新】長期優良住宅とは?メリット・デメリット、申請費用、減税・税制優遇制度、条件、申請の流れを解説

いもとちひろ

「長期優良住宅」を建てれば、税金の特例措置や補助金の支給など、さまざまな優遇措置を受けられます。しかし、長期優良住宅にはメリットもあればデメリットもあるので、両者をしっかりと確認しておかなければ、せっかく家を建てても後悔してしまうかもしれません。

そこで本記事では、長期優良住宅の認定条件をはじめ、申請費用や税金など金銭面でのメリットやデメリット、後悔しないためのポイントをお伝えします。これから家づくりを検討している方はぜひ、参考にしてください。

長期優良住宅とは?長期優良住宅認定制度の認定条件について

長期優良住宅は文字どおり、“長きにわたって良好な状態で住み続けられる住宅のこと”です。そのために、さまざまな認定基準が設けられています。

金銭面のメリットやデメリットをお伝えする前に、まずは長期優良住宅が設けられた目的や認定条件などの基本部分を説明します。

長期優良住宅の目的

これまでの住宅は、“造っては、壊す”の「スクラップ&ビルド型」でした。しかし、これからの時代は“良いものを造って、手入れしながら長く大切に使う”「ストック型」の住宅を目指しています。そのために設けられたのが、長期優良住宅です。

長期優良住宅の主な認定基準

手入れしながら長く住み続けるために、新築の長期優良住宅には次の8つの認定基準が設けられています。

新築の長期優良住宅の8つの認定基準
  • 劣化対策
  • 耐震性
  • 省エネルギー性
  • 維持管理、更新の容易性
  • 居住環境
  • 住戸面積
  • 維持保全計画
  • 災害配慮

上記で挙げたのは新築住宅の基準ですが、中古や増改築、マンションの場合は項目が異なります。詳しくは国土交通省の「長期優良住宅のページ」(※1)に記載されていますので、目を通してみてください。

※1「長期優良住宅のページ」(国土交通省)

長期優良住宅にすると税制優遇?気になるメリットについて

認定基準の項目にあるように、長期優良住宅には劣化対策や耐震性、省エネルギー性などが備わっているため、安全かつ快適に暮らすことができます。たとえば最小限の冷暖房で、夏は涼しく、冬には暖かく快適に暮らせるのも、長期優良住宅ならではのメリットです。

住宅性能も気になる部分ではありますが、家づくりにあたって税金や保険などのメリットを知りたい方も多いと思いますので、この章では「長期優良住宅の金銭面でのメリット」をお伝えします。

税金の特例措置を受けられる

長期優良住宅は国が推奨している住宅ということもあり、税金にかかわる次のような特例や優遇措置を受けられます。

長期優良住宅の税金に関わる特例や優遇措置

なお、制度の詳細は随時変更される可能性があるため、最新情報は必ずご自身でご確認ください。当記事では、2024年8月時点の情報をもとに説明していきます。

不動産取得税

名称どおり、不動産を取得した際にかかるのが「不動産取得税」です。
軽減措置によって一定額が控除されますが、一般住宅が1,200万円のところ、長期優良住宅は1,300万円が控除されます。(※2)

※2「長期優良住宅認定制度の概要について」よりP2「税の特例措置」(一般社団法人 住宅性能評価・表示協会)

登録免許税

土地を購入したときには名義変更を、家を建てたときには新たに登記簿を作成します。この手続きを登記といって、その際に支払うのが「登録免許税」です。
登録免許税にも税率が引き下げられる特例措置があり、長期優良住宅であれば、その引き下げ率が優遇されます。

  一般住宅
(軽減税率)
長期優良住宅
(軽減税率)
所有権移転登記 0.3% 0.2%
所有権保存登記 0.15% 0.1%

出典:「登録免許税の税率の軽減措置に関するお知らせ」(国税庁)の情報をもとに作成

固定資産税

住宅や土地などの固定資産を所有する場合、「固定資産税」がかかります。新築であれば取得から3年間は1/2に減額されますが、長期優良住宅はその減額期間が5年間に延長されます。(※3)

※3「長期優良住宅認定制度の概要について」よりP2「税の特例措置」(一般社団法人 住宅性能評価・表示協会)

住宅ローン控除

「住宅ローン控除(住宅ローン減税)」は、住宅ローンを利用してマイホームを購入した場合に、年末の住宅ローン残高の0.7%が所得税や住民税の一部から控除される制度です。借入限度額や適用期間、最大控除額は住宅性能によって段階的に決められており、認定長期優良住宅が最も優遇されます。(※4)

※4「長期優良住宅認定制度の概要について」よりP2「税の特例措置」(一般社団法人 住宅性能評価・表示協会)

居住年 借入限度額 控除期間 最大控除額
令和4年から令和5年まで 5,000万円 13年 455万円
令和6年から令和7年まで 4,500万円 409.5万円

出典: 「住宅ローン減税」(国税庁)の情報をもとに作成

なお、令和6年以降に居住する場合、一般住宅は住宅ローン控除適用外となります。

地震保険料が割り引きされる

地震保険は、建築年や住宅の性能に応じて保険料に割引が適用されます。長期優良住宅の場合は耐震等級と免震建築物に当てはまるため、保険料が50%引きになります。(※5)

なお、引受保険会社によって保険料が異なる火災保険とは違って、地震保険はどの保険会社で契約しても補償内容、保険料、割引率はすべて同じです。

※5「長期優良住宅認定制度の概要について」よりP2「地震保険料の割引」(一般社団法人 住宅性能評価・表示協会)

住宅ローンの金利が引き下げられる

  金利引き下げ期間 金利引き下げ幅
フラット35S(ZEH)(※6) 当初5年間
6年目~10年目まで
▲0.5%
▲0.25%
フラット35S(金利Aプラン) 当初10年間 ▲0.25%
フラット35S(金利Bプラン) 当初5年間

環境に配慮したサステナブル住宅であるZEH(ゼッチ)プランが、最も優遇率が高くなっています。また、金利Aプランのほうが技術基準が高く設定されているため、金利Bプランよりも引き下げ期間が長く設けられています。

金利はたった0.1%の差でも総返済額に大きく影響するので、0.25〜0.5%も引き下げられるのは長期優良住宅の認定を受ける大きなメリットです。

また、金利の引き下げ優遇は適用されませんが、長期優良住宅を対象にした最長50年間の全期間固定金利ローン「フラット50」(※7)も利用できます。

ZEHについては、こちらの記事もぜひ参考にしてみてください。
サステナブル住宅とはどんな家?ZEHを例に特徴や補助金を紹介

※6「【フラット35】S:全期間固定金利の住宅ローン」(住宅金融支援機構)
※7「【フラット50】:長期固定金利住宅ローン」(住宅金融支援機構)

補助金制度を利用できる

長期優良住宅の認定を受けると、次のような補助金が支給されます。

長期優良住宅で支給される補助金

それぞれ見ていきましょう。

地域型住宅グリーン化事業

「地域型住宅グリーン化事業」(※8)は、国土交通省の採択を受けた中小工務店で省エネ性の高い木造住宅を取得すると、70~140万円の補助金が支給される制度です。

申請対象となるのは中小工務店のみのため、ハウスメーカーは対象外となる点に注意しましょう。

※8「令和4年度事業からの変更点」(地域型住宅グリーン化事業(評価))

子育てエコホーム支援事業

2023年の「こどもエコすまい支援事業」の後継制度として2024年には「子育てエコホーム支援事業」(※9)が始まりました。こどもエコすまい支援事業ではZEH住宅のみでしたが、2024年度は長期優良住宅も対象となる点が変更されました。

新築で長期優良住宅を取得した場合は、最大100万円が支給されます。

※9「子育てエコホーム支援事業」(国土交通省)

なお、上記の制度は随時変更される可能性があるため、最新情報は各制度の主管となる省庁が管理するサイトでご確認ください。

実はデメリットも?知っておきたい長期優良住宅の注意点

長期優良住宅はさまざまなメリットがある一方で、費用面での注意点もあります。

長期優良住宅で支給される補助金

それぞれ見ていきましょう。

一般住宅よりも建築費用が高くなりやすい

良好な状態で長きにわたって住み続けるために、長期優良住宅には高品質かつ高性能な建材や設備が使われているので、一般住宅と比べると建築費用が高くなります。家づくりは限られた予算の中で行うため、予算を圧迫してまで認定を受けるべきなのかと問われると難しい部分です。

地域や間取りによっては思うような節電効果が得られず、「費用対効果が高くなかった」と感じている方も一定数います。一般住宅よりは光熱費を抑えられる場合がほとんどですが、必ずしも期待するような効果が得られるとは限らない点に納得したうえで、認定を受けてください。

申請費用がかかる

長期優良住宅と認定されるには、所管行政庁に申請書類を提出する必要があります。申請自体にかかる費用は5~6万円ですが、住宅会社や工務店に支払う申請書類作成費用と合わせると20~30万円ほどの費用がかかる点がデメリットです。

しかし、長期優良住宅と認定されれば、前章で説明した税制面での優遇措置が適用され、要件を満たせば補助金も支給されます。申請にかかる費用と優遇措置や補助金によって得られる給付金を比べると、給付金が上回る場合がほとんどでしょう。まずは申請費用と優遇措置・補助金の両者の金額をしっかりと確認してみることをお勧めします。

定期点検やメンテナンス費用がかかる

長期優良住宅は基準に沿って建築し、認定を受けたら終わりではありません。良い状態を保ちながら長く住み続けるために、建築後には定期点検とメンテナンスが義務付けられています。定期点検の期間は30年以上で、点検間隔は10年以内(※10)。また、地震や台風など大きな災害が発生した場合は臨時点検を実施する必要があります。点検を行い修繕が必要な箇所があれば、その都度メンテナンスが必要です。

アフターフォローとして点検や補修を無償で行う住宅会社も多いのですが、有料の場合は点検のみで5~7万円ほどの費用がかかります。

点検記録さえ残せば自己点検することも可能ですが、安全面を考慮するとあまりお勧めできません。点検の義務を果たさなければ認定基準を取り消され、優遇措置や補助金の返還を求められる恐れがあるため、点検は必ず行いましょう。

※10「長期優良住宅認定制度の概要について」よりP6「【維持保全における定期的な「点検」と「調査」・「修繕」・「改良」の流れ】」(一般社団法人 住宅性能評価・表示協会)

長期優良住宅で後悔しないために覚えておきたいポイント

長期優良住宅にはさまざまなメリットがありますが、「建てて後悔した」という声も一部あります。建ててから後悔しないために、気を付けるべきポイントを2つ確認しておきましょう。

希望入居時期までに引き渡しが可能なのか確認する

長期優良住宅は一般住宅よりも、引き渡しまでに時間がかかる可能性があります。
施工自体は一般住宅と同じように進みますが、認定を受けるための基準確認や申請期間に時間を取られるからです。

家づくりは、初回打ち合わせから引き渡しまでに10ヵ月前後かかるのが一般的ですが、長期優良住宅は一般住宅よりも設計や申請に時間を要するため、2ヵ月ほど長く見ておくことをお勧めします。打ち合わせや工事、申請などに時間がかかると、それ以上長引く場合もあるかもしれません。
希望入居時期が決まっているのなら、それまでに引き渡しが可能であるかを必ず住宅会社に確認しておきましょう。

維持管理費用をマネープランに含めておく

前述したように、長期優良住宅には定期点検やメンテナンス費用がかかります。それらを維持管理費用に含めていなかった場合、思わぬ出費に後悔することもあるでしょう。

家づくりでは、家を建てるまでの費用だけではなく、“家を建てた後にかかる費用”も考えておくことが大切です。実際に維持管理費用の捻出が厳しくなり、家を手放す人もいます。

定期点検やメンテナンス費用も必ずマネープランに含めて、維持ができそうなのかを慎重に検討しましょう。

長期優良住宅のメリットとデメリットを知って、後悔のないマイホームを!

長期優良住宅には、省エネ性と安全性のメリットだけではなく、税制面の優遇制度や補助金制度など金銭面でのメリットも多くあります。

しかし、認定を受けるためには技術基準を満たす必要があり、建築費用や申請費用などの出ていくお金も大きく、維持管理費用も必要です。

長期優良住宅を建てて、点検やメンテナンスをしながら暮らしていくためには、家を建てるときの資金計画はもちろん、長期にわたったマネープランを考えておくことも大切です。
今回説明したメリットやデメリットを念頭に置き、後悔のない家づくりをしてくださいね。

また、家を建てる際には団体信用生命保険での備えのことも忘れてはなりません。団体信用生命保険(団信)とは、住宅ローン契約者に万一のことが起きた際に、保険会社が住宅ローン残高を保障してくれる制度です。現在、ほぼすべての民間の住宅ローンが、団体信用生命保険加入必須となっています。

団信について詳しく知りたい方は、こちらの記事もご覧ください。
団体信用生命保険(団信)とは?保障内容から保険料、注意点まで徹底解説

公開日:2024年10月08日

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さん

いもとちひろ

大学で得た経験とFP資格の知識を活かし、家づくりや住宅資金、火災保険、相続など、住宅とお金に関する記事を中心に活動中。子育て中の母でもあり、主婦目線での貯蓄、資産運用にも関心あり。

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