住宅ローン減税とは?制度内容から手続き方法まで徹底解説

住宅ローン減税とは?制度内容から手続き方法まで徹底解説

柴田千青(しばたちはる)

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おうちを買う前に知っておきたい!「住宅購入や住居に関する税制・法律・手続き」第1回

日々の生活で大切な三大要素の衣食住。おうち時間を充実させるため、よりよい「住」環境を求めて住宅の購入を検討している人もいるでしょう。
住宅購入は人生の中でも指折りの大きな買い物です。そのため費用を少しでも抑えたいと考えるのは当然のことでしょう。
国は、良質な住宅取得を促進することで景気回復を図るとともに、環境性能などの優れた住宅の普及拡大を推進しようと、様々な制度で住宅購入を後押ししています。ですから、どんな制度があるかを知り、自分の場合は何が使えるか、どのような手続きをしていけばよいかをこのシリーズで押さえていきましょう。

住宅ローン減税

第1回は「住宅ローン減税」について、ご案内します。

高額な買い物である住宅購入の場合、自己資金だけで賄えることは少なく、大概の人は住宅ローンの利用を考えるでしょう。多額のローンは長期間で組むことが多く、その利子総額も多くなります。特に借り入れ初期は返済に占める利子の割合が大きくなるので、その負担を税金面から軽減しようというのが住宅ローン減税です。

住宅ローンを借りると支払う税金を少なくできる!

家の購入などのために住宅ローンを組んだ時に、まず利用を考えておきたいのが住宅ローン減税です。正しくは住宅借入金等特別控除といい、住宅ローン控除ともよばれます。様々な条件はありますが、この控除を利用できる場合、住宅ローンの年末残高に応じて求めた額を本来払うべき所得税の額から直接引くことができます。つまり住宅ローンを借りることで、支払う税金が少なくなるのです。また所得税額から引ききれない場合は、住民税の方からも引くことができます。

なお、税金の額から直接引くことを税額控除、そして、税率をかける前の所得から引いて調整するのを所得控除と言いますが、所得控除の場合、減税額は控除額に税率をかけたものになるため、控除額より小さくなります。医療費控除や各種保険料のような所得控除が該当します。それらに比べ、住宅ローン減税のような税額控除では控除額の分だけそのまま支払う税金が少なくなるので、減税効果がとても大きいです。

住宅ローンを借りると支払う税金を少なくできる!

所得税が少なくなる

制度名:住宅借入金等特別控除

【概要】
住宅ローンの年末残高の0.7%が、新築住宅などは原則13年、既存(中古)住宅は10年間、支払うべき所得税から控除できます。住民税からも還付を受ける人は、確定申告や年末調整をすれば自動的に住民税も再計算され、翌年支払う住民税が少なくなります。

【適用期間】
2022年~2025年12月31日

【手続き】
住宅を取得した翌年の確定申告で、取得した年の特別控除の申告を行い税金の還付を受けます。会社員の場合は、2年目以降の住宅ローン減税については、勤務先に必要な書類を提出すると年末調整でこの還付を受けられます。

【制度利用の主な要件】

  1. ローンの返済期間が10年以上であること
  2. 控除を受ける年の所得が2,000万円以下
  3. 床面積50m2以上(所得が1,000万円以下の場合、40m2

【限度額とその条件】
住宅の性能や入居年によりこの控除を受けられる借入限度額が異なります。

<借入限度額> 太枠太字の色枠部分は控除期間13年。その他は10年。

住宅性能などの条件

入居年

2022年

2023年

2024年

2025年

新築住宅 長期優良住宅・低炭素住宅 5,000万円 4,500万円
ZEH水準省エネ住宅 4,500万円 3,500万円
省エネ基準適合住宅 4,000万円 3,000万円
その他の住宅 3,000万円 0円 ※
既存住宅 長期優良住宅・低炭素住宅
ZEH水準省エネ住宅
省エネ基準適合住宅
3,000万円
その他の住宅 2,000万円

※2023年までに新築の建築確認なら2,000万円で10年間の控除

子育て支援の2024年限りの特例として、夫婦のいずれかが40歳未満または19歳未満の扶養親族のある人が、2024年中に新築の認定住宅・ZEH水準省エネ住宅・省エネ基準適合住宅を取得した場合の借入限度額は2023年と同額になります。

【参考リンク】
国土交通省報道発表 令和4年度税制改正の大綱 住宅ローン減税の延長等
https://www.mlit.go.jp/report/press/house02_hh_000172.html

住宅ローン控除を受けられない借入金

住宅ローン控除を受けられるのは銀行などの金融機関や勤務先などからの借入金で、親族や知人からの借入金は対象になりません。また勤務先からの借入金であっても無利子、または0.2%に満たない利率だと、この控除を受けることはできません。住宅ローン控除は冒頭で述べたように借入の利子負担を軽減するために設けられています。そのため無利子や低利子となりがちな借り入れを対象外としているのです。

リフォームなどで住宅ローンを利用する場合には

住宅の購入だけでなく、住宅ローンを借りて増改築などを行った場合でも要件を満たせば住宅ローン減税(住宅借入金等特別控除)を受けることができます。
なお、省エネ改修やバリアフリー改修などを行った場合はローン返済期間の要件が異なる住宅ローン減税(特定増改築など住宅借入金等特別控除)やローンを組まなくても工事費の一定額を税額控除できる住宅特定改修特別税額控除もあります。これらの特別控除については 「2.中古物件の購入、リフォームに関わる制度」 に述べますが、有利になるのはどれか比較検討し、選択して利用するようにしましょう。

住宅ローン減税の具体的な手続き方法

住宅ローン減税の具体的な手続き方法

住宅ローンを組んで住宅購入したからといって、自動的に税金が少なくなるわけではありません。住宅ローン減税を受けるには、住宅を取得等した翌年の確定申告で、住宅借入金等特別控除などの適用を受け税金を返してもらう還付申告を行う必要があります。
勤務先の年末調整だけで普段確定申告をしていない方でも、住宅ローン控除を受ける最初の年は確定申告が必要です。ただし2年目以降の住宅ローン控除については、勤務先に必要な書類を提出すると年末調整でこの還付を受けられます。

住宅ローン控除を受けるには

制度名:確定申告(住宅ローン控除による還付申告)

【申告に必要な主な書類】

  1. 不動産の登記事項証明書 ※法務局で交付
  2. 不動産売買契約書や請負契約書の写し
  3. 住宅取得資金に係る借入金の年末残高等証明書 ※住宅ローンを組んだ金融機関が発行

会社員の場合、2年目以後の年分は次の書類を勤務先に提出します。

  1. 年末調整のための(特定増改築など)住宅借入金等特別控除証明書兼給与所得者の(特定増改築など)住宅借入金等特別控除申告書 ※初年度に確定申告すると税務署から送付されます
  2. 住宅取得資金に係る借入金の年末残高等証明書 ※住宅ローンを組んだ金融機関が発行

【申告期間】
住宅を取得等した翌年の1月1日から5年間
確定申告期間は2月16日~3月15日ですが、還付申告は確定申告期間とは関係なく申告できます。
ただし、住民税からも控除を受ける場合は住民税の納税通知書が発行される前に申告が必要なので、基本的には確定申告の期限までに申告するようにしましょう。

【参考リンク】
国税庁No.2030 タックスアンサー 還付申告
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2030.htm

2022年の税制改正では、環境性能などの優れた住宅を普及させることも目的としているため、住宅性能に応じた限度額の設定が顕著です。住宅性能などの優れた家は建築費用も高くなりがちなので、どのような住宅にするか住宅ローン減税の額だけではなく、費用も合わせて考えたうえで、ご自身の生活にあったプランを選択していくようにしましょう。

公開日:2022年08月26日

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株式会社イー・カンパニー提携ファイナンシャルプランナー柴田千青さん

柴田千青(しばたちはる)

(株)イー・カンパニー提携ファイナンシャルプランナー

1級ファイナンシャル・プランニング技能士、CFP®、2級DCプランナー、精神保健福祉士
出産退職を機にメーカーの技術職から「それぞれの想いを叶えるため、誰にでもお金の知識を身につけることを目指す」とファイナンシャルプランナーに転身。2012年より独立系ファイナンシャルプランナーとして金銭教育を中心に、ワークショップやセミナー講師や執筆を行う。「10歳から知っておきたいお金の心得」(えほんの杜)、「もっと知りたい!調べたい!お金のこと(3冊シリーズ)」(中央経済グループパブリッシング)へも監修協力。

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