-マイホーム・マイライフ- 第2回
きっかけは母との別れ、 人生に前向きになるためにスタートした ふたりが紡ぐ「おウチ探しプロジェクト」
神奈川県 川崎市 I氏邸―分譲マンション― vol.1
きっかけは母との別れ、人生に前向きになるためにスタートしたふたりが紡ぐ「おウチ探しプロジェクト」
「家は生活の宝石箱でなくてはならない」と、建築家のル・コルビュジエは言ったそうです。懐かしい手紙、子どもがくれたきれいな石ころ、日常の出来事がきっと人生を輝かせる宝物。この連載では、そんなマイホーム=宝石箱を手に入れた人たちが、そこに移り住んでみて感じた幸せや、豊かな生活をさまざまなケースとともにご紹介します。
さらに、マイホームを手に入れるために避けて通れないお金の話について専門家の方にアドバイスをいただき、あなたがそんな宝石箱を手に入れる一助になればと願っています。
高級ホテルよりも満足。素晴らしい眺め
武蔵小杉のタワーマンションの24階に暮らして約1年。夫のIさんは「高級ホテルに憧れなくなりました。毎晩帰宅すると、豪華なエントランスでコンシェルジュが『お帰りなさいませ』と迎えてくれるのですから」と笑います。そして何よりお気に入りなのは、多摩川の緑や東京タワー、スカイツリーまで見渡せる眺望。「他の高層ビルが夕日で輝くのもすてきだし、見下ろすと商業施設の屋上公園があって、色とりどりの服の子どもたちがはしゃぎ回る光景も、見飽きることがありません」と、妻のTさんも満足そう。
夫婦それぞれの個室は、趣味が詰まった自分だけのお城
病院のデータマネージャーを務めるTさんの趣味はバレエ。発表会を控えて衣装チェックにも熱が入ります。「バレエは社会人になってから始めました。ボリショイ・バレエ学校への短期留学ツアーに参加したことから、ロシア語も習いだして」というTさん。一方、Iさんは製造業の会社員。趣味はゴスペルで、ゴスペル仲間に誘われてマラソンも始め、多摩川沿いでトレーニングをしているそうです。お互いの仕事と趣味を尊重し、それぞれ個室を持っているというI夫妻。週末は一緒にリビングで、趣味の仲間を招いてホームパーティーを楽しんでいます。
おもてなしが好き、ホームパーティーが好き
「九州男児の彼は、家事が苦手」というTさん。それだけにマンションの最新設備に助けられているのだとか。料理後すぐに生ごみを処理するディスポーザーや、各階にあって24時間利用できるゴミ置き場、広々と使いやすく掃除もしやすい天然石のカウンタートップ等々は忙しい共働き夫婦の強い味方です。Iさんのホームパーティーでの役割は、ゴスペルで鍛えたよく通る声で場を盛り上げたり、Tさんが作る料理をみんなにサーブしたり。ふたりの息はとても合っています。出会いは、Tさんが大学卒業後に入社した大手外食産業チェーン、Iさんは学生アルバイトをしていました。「ふたりともおもてなしが好き、ホームパーティーが好きなんです。武蔵小杉は交通の便が良いし『夜景を見に来て』と言えますから友達を誘いやすい。引っ越してきてパーティーの回数が増えました」
マンション購入は、ふたりのプロジェクト
近隣の高層マンションに明かりがきらめく時刻になると、窓に広がる光景はマンハッタンの摩天楼のよう。ふたりともいつの間にか、吸い寄せられるように窓辺に来て、夜景を眺めながら話していることが多いそうです。
「これまでの思い出や、将来の夢の話とか……。このマンション購入は、妻の母が亡くなったことがきっかけ。悲しみが癒えない彼女を見守っていて、一緒に悲しむのも大事だけど、何かふたりで前向きになれるプロジェクトはないかと考え、マンションの住み替えはどうだろうか、と考えました」そう静かに語り始めたIさん。ちょうど10年間住んでいた町田の駅前マンションが、子どもやペットがいなかったことで傷みが少なく、高額で貸せそうなことや、Tさんのお父さまが生前贈与を申し出てくれたことも背中を押してくれたそうです。
「ふたりとも着るもの食べるものに浪費する方ではなく、お金をかけるなら住まいに、という価値観が一致しています。そして不動産のことって買うのも貸すのも大きな挑戦ですから、夫婦で情報を集めて何度も何度も話し合う、充実感がありますね。例えばペット可の賃貸にしたら相場より高く借りてもらえるかも、なんてアイデアを出し合って」とTさんは振り返ります。「母を失った悲しみは悲しみとして今もあります。でもそれとは別に、ふたりで新しいプロジェクトに真剣になることで、気持ちが動いて、いろいろなことが前向きに変わっていきました」
10年後も満足のいく景色を眺めたい。不動産の賃貸収入をローン返済に
とても贅沢な住まいを手にしたI夫妻ですが、「ふたりとも収入は、東京の勤め人として普通の額」だそうです。「僕は九州、彼女は四国の出身で、東京の高い家賃は無駄に思えました。どうせお金を使うなら無駄になる家賃じゃなく、早めに家を買おう、と。それで結婚直前の27歳、会社員歴の長い彼女の名義でローンを組み、南橋本の駅近マンションの6階の部屋を購入しました」。その後、妻のTさんは栄養学を学ぶために再入学し、病院に転職。10年前に今度はIさんの名義でローンを組み、南橋本のマンションは賃貸に出して、町田の駅近マンションの14階を購入。そして、今はそのマンションも賃貸に出し、これらの賃貸収入でゆとりのある生活を楽しんでいます。現在の住まいは夫婦の収入を合算してフラット35でローンを組み、購入しました。
「僕と妻の手、それに加えて賃貸収入という3本目の手がローンを支払う働きをするわけです」というIさん。Tさんも続けて「熟慮したつもりですが、万一お金のトラブルが起きたらこのマンションは貸して、また違う場所での暮らしを始めます。ふたりきりの暮らしですから、少し挑戦してもいいじゃないの、と思うんです」と言います。I夫妻の住まいの話は、息の合ったコンビが力を合わせて挑戦する、絆が深まる長い旅のように感じられました。「10年後、僕らふたりは窓から、どんな景色を眺めているだろう、とよく話し合います。それが素晴らしい、満足のいくものであるように、本や知人から資産運用について勉強中です」
神奈川県川崎市にお住まいのIさんのDATA
居住エリア:神奈川県川崎市 価格:7000万円台
居住者お名前:I.S様
家族構成:本人(40歳代)・妻(40歳代)
間取り:3LDK 延床面積:71.68㎡
間取り図
ファイナンシャルプランナーより一言
集合住宅の魅力は、エントランスや集会室といった共用部分の充実や、コンシェルジュサービスやゴミ出しをいつでもできるなどの利便性にあるでしょう。その分、毎月の家計から管理費・修繕積立金を負担することになりますが、一戸建てでは実現できないメリットと感じる人も少なくないようです。もちろん資金計画を立てるときは、住宅ローン返済の額と合わせて、管理費・修繕積立金の額にも気を配るようにしてください。
公開日:2018年10月25日
監修:久谷真理子(くたにまりこ)
株式会社フリーダムリンク専務取締役 ファイナンシャルプランナー、住宅ローンアドバイザー、公認不動産コンサルティングマスター 都市銀行にて融資業務を経験。会社設立後は、住宅ローンや相続・不動産などの相談業務および実行支援業務を行う。 また、日本経済新聞(M&I)等にて金融情報を発信。
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スマイルすまい編集部
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