
家を購入する際に多くの人が利用する住宅ローン。実は、住宅ローンをどこで借りるかの選択肢は銀行や信用金庫などの金融機関だけではないことをご存じでしょうか?
銀行や信用金庫以外の金融機関でも、住宅ローンを取り扱っています。銀行や信用金庫以外の金融機関(この記事では「ノンバンク」とします)も検討傾補に加えれば、住宅ローンの選択肢はぐっと広がるでしょう。
そこで今回は、ノンバンクと銀行などの金融機関の違いやノンバンクを利用するメリット・デメリット、事業者の種類まで、わかりやすくご案内します。
「ノンバンクの住宅ローンが気になっているけど、あまり聞いたことがないから不安」という方は、借入時の参考にしてください。
ノンバンクとは?銀行などの金融機関の住宅ローンとの違いを解説
ノンバンクとは、銀行や信用金庫のように預貯金を取り扱わず、融資業務のみに特化した金融機関の総称です。具体的には、消費者金融会社やクレジットカード会社などが挙げられます。
住宅ローンを取り扱うノンバンクは住宅ローン専門の金融会社を指し、モーゲージバンクと呼ばれることもあります。当記事では、住宅ローンを取り扱うノンバンクに焦点を当てて解説していきます。
ノンバンクと銀行の主な違いを以下にまとめました。
ノンバンク(モーゲージバンクとも呼ばれる) | 銀行などの金融機関 | |
---|---|---|
適用される法律 | 貸金業法 | 銀行法 ※信用金庫は信用金庫法 |
取り扱い業務の範囲 | 融資のみ | 預貯金・融資・為替業務 |
取り扱い住宅ローン | フラット35がほとんど | 銀行独自の住宅ローン・フラット35など ※フラット35の取り扱いがない銀行もある |
上記のとおり、それぞれ異なる法律のもと運用されています。
ノンバンクには年収の3分の1を超える借り入れを禁止する総量規制(※1)がありますが、住宅ローンは総量規制の適用外(※2)です。そのため、「ノンバンクは少額しか借り入れできない」などということはありません。「ノンバンクは危険なイメージがある」、「ノンバンクは返済忘れに対する取り立てが厳しそう」などと思う方もいるかもしれませんが、住宅ローンの延滞に対する姿勢はどの金融機関も同じです。
そして、ノンバンクで取り扱われる住宅ローンは、住宅金融支援機構と金融機関が提携して共同販売する「フラット35」がほとんどです。
銀行などの金融機関でもフラット35の取り扱いはありますが、フラット35は金融機関によって金利や諸費用が異なります。また、ノンバンクの中には独自の商品設計が魅力の「フラット35(保証型)」を取り扱っているケースもあります。
ノンバンクも借り入れ候補に加えれば、より幅広い選択肢から各家庭に適した住宅ローンを見つけやすくなるでしょう。
※1 「お借入れは年収の3分の1まで(総量規制について)【貸金業界の状況】」(日本貸金業協会)
※2 「総量規制が適用されない場合について【貸金業界の状況】」(日本貸金業協会)
ノンバンクで住宅ローンを組むメリット・デメリット
ここでは、ノンバンクで住宅ローンを組む際のメリット・デメリットをまとめました。
ノンバンクに限らず、どんな住宅ローンでも必ずメリットとデメリットがあります。またメリットやデメリットは個人の指向によって異なりますので、それぞれよく理解したうえで、ご自身にとって最適な住宅ローンを見つけてください。
ノンバンクで住宅ローンを組むメリット
ノンバンクで住宅ローンを組む主なメリットは、以下の3つです。

- 1. 職業や勤続年数などの審査基準の柔軟性が高い傾向
- 2. 審査結果が出るのが比較的早いことが多い
- 3. 好きな口座を引き落とし口座に指定できる
保険会社を除き、ほとんどのノンバンクの経営は融資業務で成り立っています。
つまり、住宅ローンの借り手がいなければ経営が成り立ちません。そのため預金業務がある銀行と比べると、審査基準の柔軟性が高く審査に通りやすい傾向にあるというのが私の経験からの印象です。実際、ノンバンクの主な取扱い商品であるフラット35は申込要件に勤続年数や職業の基準を設けていないため、非正規雇用の方や自営業者でも検討しやすくなっています。ただし、フラット35に関しては銀行でも申し込めます。銀行でフラット35を申し込む方はノンバンクでフラット35を申し込む場合と同等のメリットを享受できるという点は、留意しておきましょう。
2つめのメリットとして、ノンバンクは審査結果が出るのが早く、銀行や信用金庫に比べて事前審査と本審査にかかる日数が短い傾向があります。審査が早ければそれだけ早く契約を結べますし、手続きが月をまたいで住宅ローン金利が変わってしまう、という事態を防ぎやすくなります。ただし、ノンバンクでも申し込みが集中している場合などは通常より審査に時間がかかることもあります。審査の対応は金融機関によって違いがあるため、留意しておきましょう。審査については、後ほど詳細を解説するのであわせてご覧ください。
そして3つめのメリットは、好きな口座を引き落とし口座に指定できるというものです。銀行が提供する住宅ローンの場合は、その銀行で口座を開設して引き落とし口座に指定するのが一般的です。しかし、ノンバンクではそもそも預金業務をしていません。そのため、引き落とし口座はお好きな金融機関から選べるようになっています。「給与の口座と統一したい」「普段使いしているネット銀行の口座にしたい」など、ご自身の都合にあわせて口座を指定できるのは、利便性が高いメリットではないでしょうか。
ノンバンクで住宅ローンを組むデメリット
一方、ノンバンクで住宅ローンを組む場合には主に以下2つのデメリットがあります。

- 1. 銀行などの金融機関に比べて商品の種類が少ない
- 2. フラット35は全期間固定金利のため、選べる金利タイプが限られている
先述したとおり、ノンバンクの取扱い商品の多くはフラット35です。
フラット35は全期間固定金利のため、変動金利や固定期間選択型といった金利タイプを選べません。一般的には、全期間固定金利よりも変動金利や固定期間選択型のほうが借り入れ当初の金利は低いです。そのため「できる限り借り入れ当初の金利を低くしたい」という人には、ノンバンクの住宅ローンは金利タイプの選択肢が少ないので物足りなさを感じるかもしれません。ノンバンクの住宅ローン借り入れを検討する際は、銀行に比べて金利タイプの選択肢が限られていることに注意しましょう。
以上のように、住宅ローンをどこで借りるか検討する際にノンバンクのみに絞ってしまうと、商品種類も金利タイプも選択肢が少なくなってしまいます。銀行などの金融機関とノンバンクをあわせて検討するようにしましょう。
ノンバンクの住宅ローンは審査に通りやすいといわれる理由
ノンバンクの住宅ローンは銀行などの金融機関に比べて「審査に通りやすい」「借り入れしやすい」と言われることがあります。
もちろん、審査基準はどの金融機関もノンバンクも非公表であるため、実際のことはわかりません。ただ筆者がFPとして住宅ローンの審査状況を見てきた経験から見ても、ノンバンクは審査が通りやすい傾向があります。
その理由としては、先述したとおりノンバンクは融資業務のみなので、住宅ローンの借り手がいなければ経営が成り立たないという点が考えられます。また、ノンバンクが主に取り扱っているフラット35は申込要件に職業や雇用形態、勤続年数といった基準を設けていません。
そのため銀行の住宅ローンと比べ、自営業者やフリーランス、非正規雇用者、勤続年数の短い人であっても、審査に通りやすいと考えられます。実際、銀行では融資が通らず、ノンバンクでフラット35を申し込んだところ融資が通ったフリーランスの方を何人も見てきました。
フリーランスと住宅ローンについて気になる方は、以下の記事もあわせてご覧ください。
「フリーランスでも住宅ローンを組める?審査や借入時の注意点を解説」
実際に住宅ローンが組めるかどうかは、年齢や健康状態、過去の返済履歴などさまざまな要素で変わります。特にノンバンクは審査結果が出るのが早い傾向にあるため、事前審査の結果が1~2営業日程度でわかることが多いです。
気になる場合はノンバンクや銀行などの金融機関に相談し、事前審査を受けてみるといいでしょう。
審査については、以下の記事でもご紹介しています。参考にしてみてください。
「住宅ローン審査が通らない理由と通るための対策を銀行員が解説!」
ノンバンク事業者と代表的な住宅ローン商品を紹介
ここまでは、ノンバンクの住宅ローンの特徴や審査基準について解説してきました。しかし、ノンバンクは預金取扱金融機関でない金融会社の総称ですので、さまざまな種類の事業者がいます。そして事業者ごとに取り扱っている住宅ローン商品も異なります。
ここでは、ノンバンクの事業者のタイプと主な取り扱い商品について紹介します。
ノンバンク事業者のタイプは大きく3種類
ノンバンクの事業者は、大きく以下の3種類に分類されます。
- 住宅ローン専門の金融会社(モーゲージバンク):主にフラット35を取り扱う
- 保険会社:独自のローン商品を取り扱う
- 財形住宅金融株式会社:公的融資の財形住宅融資を取り扱う
大半の事業者はモーゲージバンクに該当します。モーゲージバンクが主に取り扱う商品はフラット35で、ハウスメーカーやクレジットカード会社が母体になっている場合もあります。
代表的な住宅ローン商品も3種類
また、代表的な住宅ローン商品は、以下の3種類に分類できます。
- フラット35(買取型)
- フラット35(保証型)
- 財形住宅融資
フラット35は買取型と保証型のタイプがあり、銀行などの金融機関からノンバンクまで多くの金融機関で取り扱いがあります。
一方、財形住宅融資は財形貯蓄を1年以上している人向けの公的融資です。所定の要件を満たさなければ利用できないため、誰でも借り入れできるわけではありません。
したがって、ノンバンクで組む住宅ローンといえば大半はフラット35になります。ここからは、フラット35の買取型と保証型の特徴と違いについて、詳しく解説します。
フラット35「買取型」と「保証型」の特徴と違い
フラット35には、一般的に普及している「買取型」と、一部の金融機関でのみ提供されている「保証型」があります。それぞれの違いを以下の表にまとめました。
買取型 | 保証型 | |
---|---|---|
特徴 | 一般的に普及しているフラット35を指す。金利の設定幅が決まっている。 | 金融機関が独自に設計できるフラット35。金利設定や団信の内容が自由。 |
住宅ローンの貸し手 | 金融機関 (ただし、融資実行後住宅金融支援機構が金融機関の住宅ローンを買い取る) |
金融機関 (住宅金融支援機構が住宅ローンに保証を付ける仕組み) |
団信 | 新機構団体信用生命保険制度が利用可能。 | 各金融機関の提供する団体信用生命保険が利用可能。 ※新機構団体信用生命保険制度は利用不可 |
取り扱い金融機関数
※2021年9月6日現在 |
321機関 | 11機関
※新規受付中は9機関のみ |
出典:「【フラット35(保証型)】:長期固定金利住宅ローン 【フラット35】」(住宅金融支援機構)
一般的に「フラット35」といえば、買取型のことを意味します。買取型は金利の設定幅や団信が指定されているため、諸費用以外の商品設計については申し込む金融機関によって大きな差がありません。
一方で、保証型は独自の商品設計が特徴です。金融機関によっては、頭金を多くすることで買取型より低金利の住宅ローンを提供しています。
また、買取型に付帯される団信は原則として新機構団信ですが、保証型は金融機関が独自に提供する団信があるため、新機構団信にはない疾病保障を付帯できることもあります。
保証型は取り扱い商品こそ少ないものの、独自性を希望する人には魅力的な住宅ローンです。ノンバンクで住宅ローンを考える際は、保証型の商品もあわせて検討するといいでしょう。
ただし、保証型の注意点として、買取型よりも審査や申込要件が厳しくなる可能性があります。審査に不安がある人は、各金融機関の要件についても細かく確認しておきましょう。
住宅ローンはノンバンクも検討候補に加えて選択肢を広げよう
この記事では、ノンバンクが提供する住宅ローンの特徴やメリット・デメリットについて解説しました。
住宅ローンの選択肢は銀行などの金融機関だけではありません。
モーゲージバンクや保険会社、公的融資を提供する財形住宅金融株式会社といったノンバンクでも住宅ローンを提供しています。ノンバンクで主に取り扱われている商品はフラット35ですが、フラット35は金融機関によって商品のタイプや諸費用が異なるため、複数比較してみるといいでしょう。
ただし、ノンバンクだけで住宅ローンを検討すると、商品種類や金利タイプが少なくなります。
銀行もノンバンクも含めて幅広い金融機関の中から、ご自身の希望の条件に合う住宅ローンを見つけてください。
公開日:2022年05月18日
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服部椿
金融代理店での勤務経験と自身の投資経験を活かしたマネーコラムを多数執筆中。 子育て中のママFPでもあり、子育て世帯向けの資産形成、ライフプラン相談が得意。保有資格:2級ファイナンシャル・プランニング技能士