「住宅を購入したいが、新築か中古かで迷う」
「結局どっちがお得なの?」
「中古一戸建ての方が安そうだけど、リフォーム代などで結局高くつく?」
「中古物件を買ったときに、思わぬ落とし穴がないか不安…」
中古住宅の購入を検討している方の中には、このような悩みや不安を持っている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
そこでこの記事では、新築と比べた中古住宅のメリットや、中古住宅を購入するうえで気をつけるべきこと、築年数の狙い目などを解説します。また、購入後の後悔を防ぐために、中古住宅のデメリットや失敗事例も紹介します。
かかる費用のシミュレーションでは、購入費のみならず維持費も比較しますので、どの程度差額が出るのか参考にしてください。
中古住宅購入のメリット6点
まず、中古住宅のメリットから解説していきます。
中古住宅の購入には、以下のようなメリットがあります。
- 物件の購入費用が安い
- 家具や家電がセットで手に入る場合がある
- お気に入りの町やエリアに住める
- すぐに住める
- 土地や建物面積が広い
- 磨けば光る「掘り出し物件」に出会える可能性がある
どのようなメリットなのか、1つずつ詳しく見ていきましょう。
物件の購入費用が安い
住宅金融支援機構によると、住宅の平均物件購入価格は以下の表のようになっています。
平均物件購入価格 | ||
---|---|---|
中古 | 中古戸建て | 2,480万円 |
中古マンション | 2,971万円 | |
新築 | 注文住宅 | 3,534万円 |
建売住宅 | 3,495万円 | |
新築マンション | 4,545万円 |
中古一戸建てと新築の建売住宅の場合、差額は1,015万円、マンションの場合は1,574万円です。このように、中古住宅は新築と比べて平均1,000万円以上も安く購入できます。
家具や家電がセットで手に入る場合がある
中古住宅では、前のオーナーが設置した家具家電が残っていることがあります。このような残置物はそのまま利用できる場合もあり、利用できれば新たに家具家電を購入しなくて済みます。
お気に入りの町やエリアに住める
新築の場合、空き地がない場所には家は建てられません。そして、人気の高い町や駅近くなど好条件のエリアでは望む立地で空き地が見つからないことも一般的です。土地付きの中古住宅を購入し建て替えることも可能ですが、その分費用がかかります。 そのため新築の場合、どうしても立地の希望が叶いづらい現状があります。
一方で中古物件の場合は、人気の高い町、好条件のエリアでも販売されます。つまり、好きな町や希望通りのエリアに住める可能性が上がるのです。
すぐに住める
新築の注文住宅の場合、家を建てるまで時間がかかります。土地を決めてから、家のデザインやイメージ構想、情報収集に1ヵ月〜3ヵ月、検討や契約に2ヵ月〜6ヵ月、建築工事3ヵ月〜6ヵ月とスムーズに進めても1年くらいかかる想定になるでしょう。
しかし、中古住宅であれば、大規模なリフォームが必要な物件でない限り、購入後すぐに住み始めることが可能です。
中古住宅の入居までの流れは、建売住宅と似ています。こちらの記事に詳しく紹介しているので、入居までの期間が気になる方は参考にしてみてください。
「建売住宅と注文住宅を徹底比較!割合、価格差、入居までの期間、寿命の違いは?」
土地や建物面積が広い
次のグラフは、中古戸建て住宅の築年帯別平均建物面積の推移を示したものです。
このグラフからは、家を建ててから30年までは年数が増すほど敷地や建物面積が広くなる傾向が読み取れます。つまり、中古住宅は新築物件と比べ、より広い家に住める可能性が高いということです。
磨けば光る「掘り出し物件」に出会える可能性がある
中古物件の中には、意匠や建材にこだわっている家があります。一見すると年季が入っているようでも、少々手を加えるだけで魅力的に輝き出すような、磨けば光る掘り出し物件に出会える可能性もあるのです。
中古住宅購入のデメリット5点
次に、中古住宅購入についてのデメリットを見てみましょう。主に以下の5点が挙げられます。
- リフォーム費用がかかる
- 住宅設備や備え付けの家電が古いことがある
- 断熱性や気密性が低い物件がある
- 耐震性が低い物件がある
- 住宅ローンが組みづらい
デメリットについても、1つずつ解説していきます。
リフォーム費用がかかる
床や天井が傷んでいたり、バス・トイレ・キッチンなどの水回りが古かったりなど、中古住宅は住むために修繕を必要とする場合があります。
また、住み始めた後も、経年劣化した箇所を修繕するために定期的にリフォームが必要になることも。さらに、長期的にどの程度のリフォーム費用がかかるのか予想がしづらい点にも留意すべきでしょう。
住宅設備や備え付けの家電が古いことがある
特にガスコンロやエアコンなど、埋め込みや設置を行う家電は、撤去されずそのまま残されることがあります。
家電を購入しなくても使えるメリットがありますが、このような家電は旧式である場合が多く、エネルギー効率が悪く光熱費がかさんだり、人によっては使いづらい場合もあるでしょう。
断熱性や気密性が低い物件がある
中古住宅の中には、冬は隙間風が入り冷えやすかったり、夏は冷房が効きづらかったりと、新築住宅と比べて断熱性や気密性の低い物件があります。
耐震性が低い物件がある
住宅の耐震基準は物件の築年数によって異なります。
耐震基準を定める建築基準法は定期的に改正され、それに伴い住宅として満たすべき工法や構造など耐震基準が強化されています。そのため、建てられた時期によって耐震性が異なるのです。
たとえば、1981年の改正では必要壁量が増え、2000年の改正では筋交い(耐震性を高めるため、梁と柱の間に斜めに入れる建材)の金具や基礎構造などが規定されました。(※1)
そのため、法改正前に建てられた中古住宅は、法改正後の住宅と比べ耐震性が低い場合があります。
住宅ローンが組みづらい
中古住宅は住宅ローンが組みづらいというデメリットもあります。
住宅ローンは、住宅を担保にお金を借ります。つまり、借り主が万が一ローンを返済できなくなったら、住宅が差し押さえられるのです。そのため、住宅ローンを組むには「物件に担保としての価値があること」が前提となります。
しかし、中古住宅は建築後に何年も経っているため、物件の資産価値がないと見なされることがあるのです。このような物件は担保にならないため、住宅ローンが組めない場合もあります。
中古住宅と新築、購入するならどっちがお得?費用を徹底比較
ここまでは、中古住宅のメリット・デメリットについて解説してきました。
では実際に費用面では中古住宅と新築のどっちがお得になるのでしょうか?
そこで、中古物件と新築物件それぞれの購入費、購入から35年間でかかる維持費をシミュレーションしました。
- 【前提条件】
- 中古一戸建て、新築建売を比較
- 頭金は物件購入費用の10%用意し、適用金利:年0.675%(全期間固定金利)で住宅ローンを組む
- リフォーム費用は以下とする
中古:購入時にリフォーム費用が発生。リフォーム費用は628万円(※2)とする。また購入後も10年に1度100万円のリフォーム費用がかかる。リフォームローンは組まない。
新築:購入から10年後にリフォーム費用が発生。10年に1度100万円のリフォーム費用がかかる。リフォームローンは組まない。(※3)
中古戸建て | 新築建売住宅 | 備考 | |
---|---|---|---|
販売価格(※4) | 2,480万円 | 3,495万円 | |
課税標準額 | 1,240万円 | 2,447万円 | 新築:物件購入費用×0.7 中古:物件購入費用×0.5 |
頭金 | 248万円 | 350万円 | |
住宅ローン | 2,232万円 | 3,145万円 | |
住宅ローン利子(35年)(※5) | 588万円 | 828万円 | |
仲介手数料(※6) | 80万円 | 111万円 | 売買価格の3%+6万円 |
不動産取得税(※7) | 37万円 | 73万円 | 課税標準額×3% |
登記申請の登録免許税(※8) | 25万円 | 49万円 | 課税標準額×2% |
固定資産税(※9) | 608万円 | 1,199万円 | 課税標準額×1.4%×35年 |
都市計画税 | 130万円 | 257万円 | 課税標準額×0.3%×35年 |
購入時リフォーム費用(※3) | 628万円 | 0円 | |
経年劣化にかかるリフォーム費用 | 350万円 | 250万円 | |
合計 | 4,926万円 | 6,262万円 |
- ※2 「2017年大型リフォーム実施者調査」よりP1「2017年 大型リフォーム実施者調査」(株式会社リクルート住まいカンパニー)
- ※3 「住宅リフォーム市場の実態把握と市場活性化に関する研究」よりP10「図表-12 住宅リフォームの費用」、P23「図表-28 リフォームの検討内容と築年数」(国土交通省国土交通政策研究所)
- ※4 「2020年度 フラット35利用者調査」よりP9「5 所要資金(融資区分別・全国)」(住宅金融支援機構)
- ※5 「借入希望金額から返済額を計算:【フラット35】」(住宅金融支援機構)を使用し算出。
- ※6 「初めて家を購入する人が読む本」よりP6「購入者が調達できる資金」(全日本不動産協会)
- ※7 「令和3年度国土交通省税制改正概要」よりP9「土地等に係る流通税の特例措置の延長 (登録免許税・不動産取得税 )」(国土交通省)
- ※8 「No.7191登録免許税の税額表」(国税庁)
- ※9 「建設産業・不動産業:土地の保有に係る税制」(国土交通省)
このシミュレーションによると、住宅取得から35年の間にかかる費用は、中古一戸建てでは新築と比べて合計で1336万円安くなりました。このシミュレーション結果からは、リフォーム費用を加味しても、中古一戸建ての方が安いことがわかります。
ただし、必要となるリフォーム費用は予測が難しく、場合によっては住み続けるのが困難になるような劣化が発生する可能性もあります。そのようなリスクも踏まえ、購入を検討しましょう。
中古住宅を買うときの狙い目の築年数は?
次に、中古住宅を買うなら築年数が何年の物件が狙い目かを解説します。
結論は、2000年以降に建てられ、築20年までの物件が狙い目でしょう。特に木造住宅であれば、築年数20年以内の物件がおすすめです。
その理由は、2000年以降は新耐震基準が適用されており耐震性能が高く、また住宅ローン控除が受けやすいためです。
住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)とは、毎年末の住宅ローン残高の1%が契約時期と入居時期に応じて最大13年間、所得税(一部、翌年の住民税)から控除される制度です。(※10)
※10「住宅ローン減税制度利用の概要|すまい給付金」(国土交通省)
中古住宅を購入した場合に住宅ローン控除を受けるためには、耐震性能を有していることが必要です。具体的には、木造で築20年以内、鉄骨や鉄筋コンクリートなどの耐火構造であれば築25年以内の物件が対象となります。それ以上の築年数が経っていても、検査を受け証明書を提出すれば控除は受けられますが、築浅の物件を選ぶ方が無難です。
中古住宅購入の際に住宅ローン控除を受けるための条件である「中古住宅の耐震性の要件」は以下表をご参照ください。
後悔しないためにも! 中古住宅を購入する際に確認しておきたいポイント
中古住宅を購入してから後悔するといったことがないように、以下について確認しておくことをお勧めします。
売りに出された理由は何か
物件に問題ないか確認するためにも、売りに出された理由を不動産業者に確認することをおすすめします。
建物の欠陥や劣化など重要な事項については、不動産業者に説明責任があります。
再建築不可物件でないか
リフォームや建て替えができない「再建築不可物件」でないかも確認するとよいでしょう。具体的には、接道(敷地と接している道路)が2m未満である場合、再建築不可物件です。
なお、接道やその道幅に関しては、再建築不可物件でなくても注意が必要です。大きい車が入れない狭い道であれば、工事や引っ越しに追加費用がかかることがあるためです。
雨漏りやシミがないか
一般的に、屋根の修繕工事は他の場所と比べて、費用が高くなりやすい傾向があります。そのため、雨漏りの有無はしっかり確認することをおすすめします。
雨漏りやシミをチェックするためには、可能なら雨の日に内覧しましょう。晴れの日には気づかなかったシミが天井や壁、接合部などに現れ、問題のある箇所がわかりやすいからです。
床下や屋根裏などの目に見えない箇所が傷んでいないか
外見がきれいな家でも、内部が傷んでいる場合は大規模な修繕が必要になります。シロアリが入っていないか、漏水がないか、ひび割れや破損がないかなど、目につきづらい場所もできる限り確認してください。
耐震性能について
正確な耐震性能は、築年数だけでは判断できません。建築士などプロの目でチェックしてもらうと安心でしょう。
契約不適合責任について
契約不適合責任とは、引き渡された目的物が種類や品質、数量に関して契約の内容に適合しないものであるときに売主が買主に対して負担する法的責任のことを言います。(※11)万が一、購入前には気づかなかった欠陥が家にあったなどの場合に備えて、事前に契約書の契約不適合に関する条項を確認することをお勧めします。
※11「民法の一部を改正する法律」よりP97「買主の追完請求権」(法務省)
中古住宅購入のメリット・デメリットを理解し、後悔しない住宅購入を
この記事では、中古住宅を購入するうえでのメリット・デメリットを、新築住宅と比較し紹介しました。
中古住宅の最も大きいメリットは購入費用が安く済むことですが、一方のデメリットはリフォーム費用が必要になる場合もあるということです。
中古住宅の購入時に失敗を避けるためには、屋根裏や床下など目につきづらい場所もチェックすることや、契約不適合責任について書面でしっかり確認するなどが重要です。耐震性能に不安があれば、建築士にも確認してもらいましょう。
おすすめは、2000年以降に建てられた住宅です。新耐震基準が適用されており、住宅ローン控除も受けやすいためです。
ただし、どのような家が欲しいか、その希望によっても探すべき住宅は異なるため、入念な情報収集のうえ、購入を検討するようにしましょう。
公開日:2022年05月12日
更新日:
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石坂達
ITコンサルタント、まちづくりコーディネーター、行政職員等を経て独立。沖縄-神奈川の二地域居住をしながら、ライターとして活動しています。