不動産を購入するとかかる!税金とその手続き VOL.1

不動産を購入するとかかる!税金とその手続き VOL.1

柴田千青(しばたちはる)

この連載を見る

第7回はこちら第9回はこちら

おうちを買う前に知っておきたい!「住宅購入や住居に関する税制・法律・手続き」第8回

日々の生活で大切な三大要素の衣食住。おうち時間を充実させるため、よりよい「住」環境を求めて住宅の購入を検討している人もいるでしょう。
住宅購入は人生の中でも指折りの大きな買い物です。そのため費用を少しでも抑えたいと考えるのは当然のことでしょう。
国は、良質な住宅取得を促進することで景気回復を図るとともに、環境性能などの優れた住宅の普及拡大を推進しようと、様々な制度で住宅購入を後押ししています。ですから、どんな制度があるかを知り、自分の場合は何が使えるか、どのような手続きをしていけばよいかをこのシリーズで押さえていきましょう。

不動産の保有でかかる税金 ~不動産取得税と登録免許税~

第7回までは住宅の購入やリフォームによって少なくなる税金や利用できる補助金などについて解説してきましたが、今回からは不動産の購入や所有により、かかってくる税金についてです。
第8回は住宅購入後にかかる税金の中から「不動産取得税」と「登録免許税」についてご案内します。これらには減額措置が設けられていますので、その制度について把握しておきましょう。(2023年9月現在)

土地や建物には登記が必要

不動産の保有でかかる税金 ~不動産取得税と登記免許税~

土地や建物についての権利を法的に主張するためには、その所在地や面積などの状況や、所有者などの権利関係を公示するための「登記」が必要です。そのため住宅や土地を購入したり、新築したりしたときには必ず登記をしていくことになります。

実際の登記は司法書士へ依頼することが多いので、報酬にあわせて登記費用を渡し、納付を含めた一連の手続きをしてもらいます。この登記の際にかかる費用「登録免許税」については、住宅取得に関わる軽減措置が2022年度や2023年度の税制改正で延長されています。軽減措置を受けられる間の方が住宅取得費用を抑えられることになるので、その内容について確認していきましょう。

登記の際にかかる税金とその軽減措置

制度名:登録免許税

【概要】
登記する不動産の価格に税率をかけた額が登録免許税額になります。主な税率は以下の表のとおりで、登記の種類と住宅の種類により異なります。

登記の種類

本則税率

住宅の種類

軽減措置の税率

土地の購入 所有権の移転の登記 2.0% - 1.5%
住宅の新築 所有権の保存の登記 0.4% 一般住宅 0.15%
特定認定長期優良住宅 0.1%
認定低炭素住宅 0.1%
住宅の購入 所有権の移転の登記 2.0% 一般住宅 0.3%
特定認定長期優良住宅※ 0.1%(マンション)
0.2%(戸建て住宅)
認定低炭素住宅※ 0.1%
特定の増改築などがされた住宅用家屋 0.1%

※は新築または建築後使用されたことのないものになります。
なお中古住宅に関しては、築年数要件が廃止され、一定の耐震基準に適合している家屋または1982年1月1日以降に建築された家屋が適用対象になりました。

【適用期間】
建物の登記については ~2024年3月31日
土地の登記については ~2026年3月31日

【納付時期】
登記申請時

【手続き】
実際の登記手続きは司法書士に依頼することが多いので、ご自身で手続きすることはありません。登記書類に金融機や税務署で納付した時の領収書を貼りつけるので、登記前に納付することになります。

【制度利用の主な要件】

  1. 個人の居住用建物であること
  2. 床面積50m2以上
  3. 新築または取得後1年以内の登記であること
  4. 住宅の所在する市町村等の住宅用家屋証明書 ※提出が登記後になると軽減税率の適用を受けられません。

【参考リンク】
国税庁
土地の売買や住宅用家屋の所有権の保存登記等に係る登録免許税の税率の軽減措置に関するお知らせ
https://www.nta.go.jp/publication/pamph/sonota/0020003-124_01.pdf

特定の住宅用家屋の所有権の保存登記等に係る登録免許税の税率の軽減措置に関するお知らせ
https://www.nta.go.jp/publication/pamph/sonota/0020003-124_02.pdf

不動産を取得した時にかかる税金とは

土地や住宅を購入したり、家を建てたりといった不動産を取得するとかかってくる税金があります。
第9回で紹介する不動産を所有している間ずっとかかり続ける固定資産税については耳にする方も多いと思いますが、取得した時に1度だけかかる「不動産取得税」もあります。この税金にも軽減の特例措置があり、軽減措置を受けられる期間の方が住宅取得費用を抑えられることになるので、その内容について確認していきましょう。

不動産を取得した時にかかる税金とは

不動産取得税とは

名前のとおり、不動産を取得した時にかかる税金です。不動産を取得すると都道府県から納税通知書が送られてくるのでそれに従って納めます。不動産の調査が必要なものについては納税通知書が送られてくるまでに数ヵ月以上かかる場合があるので、取得後に納める税金があるということを忘れず、そのお金の準備をしておくことが大切です。
また、軽減の特例措置を受けるためには申告が必要になるので、期限内に必要な書類を提出できるようにしておきましょう。

購入や新築の時だけでなく、贈与など無償で取得した場合でも、不動産を取得したときにはこの税金が課せられます。税額は基本的に次の式で算出されます。

不動産取得税の額=取得した不動産の価格(課税標準額) × 税率

この計算式における不動産の価格は実際の購入価格や建築工事費ではなく、原則として固定資産台帳に登録されている価格です。通常は土地の場合は時価の7割程度、建物の場合は5~6割程度が目安とされています。

様々な軽減の特例措置が延長中

不動産取得税には期間限定の負担軽減の特例措置が設けられており、そのほとんどが2024年3月31日まで延長されました。税率の軽減に加え、課税標準も特例により低く抑えられており、住宅購入の負担が少なくなっているのです。

制度名:不動産取得税に係る特例措置

【概要】
税率と課税標準についての主な特例措置は次のとおりです。

税率 住宅及び土地は3%(本則4%)
課税標準 土地 宅地等の取得の場合、課税標準を評価額の2分の1に圧縮
住宅 新築住宅 1,200万円を控除
※認定長期優良住宅については1,300万円
中古住宅 住宅の新築時期により最高で1,200万円を控除

なお、宅地等については、次の(1)(2)のいずれか多い額が、不動産取得税の税額から控除されます。

(1)4万5000円 ※150万円に税率3%を乗じた額

(2)土地1m2あたりの価格×1/2×住宅の床面積の2倍(200m2が限度)×税率(3%)

【適用期間】
~2024年3月31日

【手続き】
自治体により異なりますが不動産を取得した日から概ね30~60日以内に、その所在地を管理している都道府県税の事務所へ申告します。名称や様式は自治体によって異なりますので、各々の自治体のHPなどでご確認ください。
審査の結果、納める税額がある場合は納税通知書が送られてくるので、その内容に従って納めます。

【制度利用の主な要件】

  1. 床面積が50m2以上240m2以下
  2. 個人が自己の居住用に取得した住宅であること
  3. 昭和57年1月1日以降に新築されたもの(新耐震基準に適合していることが証明されたもの)

【参考リンク】
総務省 地方税制制度 不動産取得税
https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/jichi_zeisei/czaisei/czaisei_seido/150790_17.html
国土交通省 不動産取得税に係る特例措置
https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jutakukentiku_house_tk2_000020.html

住宅を購入するときは土地や建物自体の価格にばかり目が向きがちですが、購入によりかかってくる税金や手続きに必要な費用なども積みあがると多額になってきます。予想外に出費が多くなって生活に支障が出ることのないよう、それらの資金についてもあわせてしっかりと計画するようにしましょう。

公開日:2022年08月26日

更新日:

この記事はいかがでしたか?
感想を教えてください。

株式会社イー・カンパニー提携ファイナンシャルプランナー柴田千青さん

柴田千青(しばたちはる)

(株)イー・カンパニー提携ファイナンシャルプランナー

1級ファイナンシャル・プランニング技能士、CFP®、2級DCプランナー、精神保健福祉士
出産退職を機にメーカーの技術職から「それぞれの想いを叶えるため、誰にでもお金の知識を身につけることを目指す」とファイナンシャルプランナーに転身。2012年より独立系ファイナンシャルプランナーとして金銭教育を中心に、ワークショップやセミナー講師や執筆を行う。「10歳から知っておきたいお金の心得」(えほんの杜)、「もっと知りたい!調べたい!お金のこと(3冊シリーズ)」(中央経済グループパブリッシング)へも監修協力。

RECOMMENDおすすめ記事はこちら

×
LINE登録はこちら