マイホームの購入を考え始めてから、「建売住宅」と「注文住宅」どちらにしよう?と悩むこともあるのではないでしょうか。今回は、両者の「メリット・デメリット」について比較を行い、主に「割合」「価格差」「入居までの期間」「寿命」の違いについて詳しく解説します。
建売住宅と注文住宅の主な特徴とメリット・デメリット
まずは、建売住宅と注文住宅の主な特徴を比較してみましょう。
建売住宅は、土地と家を「セット」で購入するのが特徴です。すでに家が建っている場合と、家がまだ完成していない段階で販売される場合があります。家が未完成でも、基本的には建築確認が済み間取りは決まっているので、建設場所と間取りが気に入れば購入できます。
一方で注文住宅は、土地を探して購入し、その土地にあった家を自由に設計して建てるのが特徴です。間取りはもちろん、外装の素材やキッチン設備などまですべて自分たちの好みの物を選べます。
建売住宅と注文住宅にはそれぞれメリット・デメリットがあり、比較したうえで選ぶことが大切です。
建売住宅のメリット・デメリット
建売住宅は、すでに土地と建物が用意されているため、打ち合わせや手続きの手間を最小限に抑えられることがメリットです。建築済みなら契約から約1ヵ月〜1ヵ月半と短期間で入居でき、建築中の場合でも引き渡し日が決まっているので、あらかじめ決められたスケジュールに沿って進められます。市場に出る前の立地の良い土地を不動産会社が確保して分譲することも多く、好立地な物件が多いのも建売住宅の特徴です。
一方デメリットは、ほとんどの建売住宅では間取りを変更できないことです。設備についても、グレードは選べてもメーカーは変えられないなど、好みの物を選べる自由度が低いです。
また、家が完成している場合には、建築過程を確認することができません。建売住宅は、購入後に万一トラブルが発覚した場合に備え、どのようなアフターサポートが付いているかを確認しておくことが大切です。
注文住宅のメリット・デメリット
注文住宅は、自由度が高く、細部までこだわった家を建てられるのがメリットです。土地の広さや家の間取り、使用する建材や設備の1つ1つまで、自分たちの好みで選べます。
また、整地段階から建築過程をすべて確認できるので、工事中に万一問題が発生した場合には指摘し是正を求めることができる安心感があります。
一方デメリットは、入居までの期間が長くなりがちな点です。土地探しやハウスメーカー・工務店探しから始め、打ち合わせを重ねて設計して建築に至るため、8ヵ月~1年半程度かかることが一般的です。建物本体や諸費用が高く、細部にこだわるとコストが際限なくかかってしまうこともデメリットとなるでしょう。
注文住宅では、土地を含めた予算上限を決めておき、こだわるところ、こだわらないところのメリハリをつけることがポイントです。
建売住宅と注文住宅、割合が多いのはどっち?
建売住宅と注文住宅では、どちらが多く選ばれているのか気になる人も多いのではないでしょうか。ここではデータを基に両者を比較してみました。
例年、注文住宅の人気が高い傾向にある
住宅金融支援機構が2021年に発表した「2020年度フラット35利用者調査」によると、2020年度の建売住宅と注文住宅の融資件数は以下のとおりです。
出典: 「2020年度フラット35利用者調査」よりP1「2 調査対象」(住宅金融支援機構)を加工して作成
※注文住宅には、注文住宅と土地付注文住宅の件数が含まれます。
その差は約1.7倍にもなり、さらに過去10年間の調査結果を見ても、常に注文住宅が建売住宅を上回っています。(※1)
これほど注文住宅の人気が高いのは、建売住宅では実現が難しい希望を叶えられるためと考えられます。地球環境に配慮しながら、長く快適に暮らしていける「サステナブル住宅」が近年注目を集めていることも、注文住宅を選ぶ人が多い理由の1つと推察できます。
サステナブル住宅については下記の記事をご覧ください。
「サステナブル住宅とはどんな家?ZEHを例に特徴や補助金を紹介」
※1 「2020年度フラット35利用者調査」よりP2「1 融資区分(時系列・全体)」(住宅金融支援機構)
建売住宅と注文住宅の価格差はいくら?
次は、建売住宅と注文住宅の価格を比較してみましょう。
建売住宅と注文住宅では平均1,500万円ほどの価格差がある
国土交通省が発表した「令和2年度住宅市場動向調査」によると、注文住宅の平均購入価格は5,359万円、分譲戸建住宅(建売住宅)は3,826万円となっており、注文住宅の方が1,500万円ほど高額であることがわかります。
出典: 「令和2年度住宅市場動向調査 ~調査結果の概要(抜粋)~」より「(参考1)購入価格と年収倍率(三大都市圏)」(国土交通省)を加工して作成
これは、建売住宅では間取りや仕様を規格化することで、コストを抑えて建築できるのが大きな理由です。規格に沿って建てることから個別の設計が不要になり、さらに建材や設備もメーカーから一括・大量に仕入れることでコストを抑えられるため、注文住宅より安く提供できるのです。
注文住宅では、建て主の希望に沿った家にするために、さまざまな手間と時間がかかります。設計士による設計、複数の打ち合わせ、建材や設備の個別発注など、その手間と時間に応じてどうしても費用が高くなってしまうことが多いのです。
初期コストはかかるものの、注文住宅の方がコストパフォーマンスが高いこともある
注文住宅は、初期コストとしての建築費は高くなる場合が多いことは事実です。しかし、メンテナンス間隔が長いものや耐用年数が高い建材を選ぶなどすれば、結果的にコストパフォーマンスが高くなることもあります。
たとえば近年では、戸建ての約89%で外壁材としてサイディング(板状の外壁材)が使用されています(※2)。同じサイディングでも10年に1回塗装メンテナンスが必要なものや、20年に1度でよいものなどがあり、注文住宅なら後者を選ぶことが可能です。
一方で建売住宅は、コストを抑えるために、こまめなメンテナンスを要する比較的安価なものが使われていることが少なくありません。そういった場合には、結果的に注文住宅よりもメンテナンスコストがかさむ可能性があります。
住宅を購入するときには、初期コストだけではなく、長期的なメンテナンスコストも含めて比較するとよいでしょう。
※2 「2022年3月版『住宅用建材使用状況調査』の概要」(一般社団法人 日本サッシ協会)
建売住宅と注文住宅、入居までの期間の違いは?
それでは建売住宅と注文住宅では、入居までの期間にはどれくらいの違いがあるのか詳しく見てみましょう。
建売住宅の契約から入居までの期間は1ヵ月〜1ヵ月半
すでに完成している建売住宅は、以下の流れで進むのが一般的です。
不動産売買契約から入居までにかかる期間は、約1ヵ月〜1ヵ月半が目安です。すでに住宅が完成しているなら、契約すれば即日入居できるのでは?と思う人もいるかもしれません。現金で一括購入するのなら不可能ではありませんが、住宅ローンを組むのであれば、その手続きに時間がかかるため、建売住宅とはいえ1ヵ月程度はかかると考えておきましょう。
また、同じ建売住宅でもまだ建物が完成しておらず建築中の場合は、さらに時間がかかります。
注文住宅の契約から入居までの期間は8ヵ月〜1年半
注文住宅は、以下のような流れで進むのが一般的です。
注文住宅の場合は、土地探しから始めることが多いため、建売住宅よりも時間がかかります。順調に進んだ場合でも、土地とハウスメーカー・工務店を平行して探し、工事請負契約までに3ヵ月、そこから引き渡しまでに5ヵ月程度は必要です。土地探しや設計に時間がかかると、そのぶん完成の日程は後ろに延びていくので、実際は1年〜1年半程度見込んでおく必要があるでしょう。
また、注文住宅の場合、土地と建物の融資の時期が異なることが特徴です。住宅ローン融資は住宅の引き渡し時に実行されるため、土地購入や着工金などに資金が必要な場合は、一時的に融資を受ける「つなぎ融資」が必要になります。つなぎ融資は、住宅ローンで完済します。
建売住宅と注文住宅の寿命はどのくらい?
最後に、建売住宅と注文住宅では寿命に違いがあるのかを確認しましょう。
木造住宅の平均寿命は、建売住宅・注文住宅どちらも60年程度
日本の一戸建て住宅は、木造建築が多いです。総務省が2019年に発表した統計調査の結果によると、一戸建ての約92.5%が木造住宅です(※3)。また、木造住宅の平均寿命は、2011年時点の総務省の調査では約65年とされています(※4)。
建売住宅であっても注文住宅であっても、木造であれば同程度の平均寿命と考えていいでしょう。
なお、住宅が「長期優良住宅」の認定(※5)を受けているかも寿命を測る目安になります。長期優良住宅認定制度とは、「長期にわたり、良好な状態で使用するための措置が講じられた住宅」を認定する目的で国が定めた制度です。認定を受けている住宅なら3世代(おおむね75〜90年)まで大規模な改修工事が不要とされる「劣化対策等級3」に該当しているので安心です(※6)。
ただし建物の寿命は、メンテナンス状況に大きく左右される点には注意が必要です。建売住宅も注文住宅も、購入後には適切な維持管理を行いましょう。
※3 「平成30年住宅・土地統計調査 住宅数概数集計 結果の概要」よりP6「5 住宅の構造」(総務省 統計局)
※4 「建物の平均寿命実態調査」よりP7「【指針参考資料5】 建物の平均寿命について 」(国土交通省)
※5 「長期優良住宅認定制度の概要について」(一般社団法人 住宅性能評価・表示協会)
※6 「新築住宅の住宅性能表示制度 住宅性能表示制度ガイド」よりP10「3. 劣化の軽減に関すること」(国土交通省住宅局住宅生産課)
建売住宅と注文住宅それぞれの良さを比較して選択しよう
建売住宅の特徴は「規格化された土地付きの家を買う」のに対し、注文住宅の特徴は「土地を買って自由に家を建てる」です。建売住宅で自分たちが満足のいく間取りや立地の物件が見つかれば、比較的少ない手間と時間でマイホームを手に入れることが可能です。気に入った建売住宅が見つからない、あるいは細部までこだわったオンリーワンの家を建てたいなら、注文住宅を選ぶとよいでしょう。
ただし、建売住宅と注文住宅では平均1,500万円ほどの価格差があります。どちらを選ぶかは、今後何十年かの間に起こり得るライフイベントまで含めた「長期的な資金計画」を立てたうえで決めるようにしてください。
公開日:2021年12月24日
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佐藤カイ
住宅・リフォーム・不動産をメインに執筆を手がけているフリーライター。建築・リフォーム業に従事する夫とともに、中古戸建てをフルリノベーションしました。豊富な知識と確かなデータにもとづいて、役立つ情報をわかりやすくお届けします。