「新築一戸建ての防犯対策は何が必要?」と疑問を持つ方も多いと思います。
一戸建ての家は最も空き巣に狙われやすい住宅形態で、戸締りをしっかりしていても窓を壊されて侵入される可能性があります。
では、空き巣に狙われにくい家にするにはどうすべきなのでしょうか。
この記事では、空き巣犯のターゲットにされやすい家の特徴や犯行の手口を踏まえた防犯対策を、詳しく解説していきます。
一戸建ての家は空き巣の被害に遭いやすい。まず空き巣の手口や心理を理解しよう
まずは、空き巣の被害に遭いやすい家の特徴を知ること。これが、一戸建ての家を建てる際の防犯対策において、重要な手がかりになります。
一戸建ての家は、空き巣に最も狙われやすい住宅形態です。低層階の住宅は侵入しやすいことが理由の1つですが、他にも狙われやすい特徴がいくつかあります。
ここでは、被害に遭わない家づくりに役立つヒントとして、ターゲットにされやすい家や空き巣の手口を見ていきましょう。
一戸建ての家は空き巣に狙われやすい
警視庁の発表によれば、一戸建ての家は共同住宅などに比べ、空き巣に狙われやすいことが明らかになっています。
令和2年度の侵入窃盗の発生場所認知件数は、一戸建て住宅が37.0%と最も多く、共同住宅の13.6%(3階建以下、4階建以上の合計)を大きく上回っています。
出典: 「住まいる防犯110番 データで見る侵入犯罪の脅威」より「侵入窃盗の発生場所認知件数(令和2年)」(警視庁)を加工して作成
細かくデータを見てみると、4階建て以上の共同住宅よりも3階建て以下の共同住宅の方が認知件数が多く、一戸建て住宅はそれよりも多いということから、低層階の家ほど空き巣に狙われやすいということがわかります。
新築の家は最新の防犯対策を採用しているイメージがあるので、築年数がある家よりは狙われにくいと思うかもしれません。
しかし、空き巣犯の心理としては、「家を新しく建てるほどのお金を持っている…金目のものがたくさんあるのではないか」「できたばかりの家でまだあまり防犯対策ができていないのでは」と考える可能性があります。
新築の家でも空き巣への防犯対策は欠かせないのです。
「人目につかない」「隠れやすい」家が空き巣に狙われる
では、空き巣犯はどのような家をターゲットにするのでしょうか。
空き巣に狙われやすい家は、「人目につかない」そして「隠れやすい」家です。
空き巣犯はこっそりと窓やドアをこじ開け、お金や貴重品を静かに探し、そしてこっそりと逃げます。
侵入手口としては、施錠していない無締りの家への侵入が一番多く、次にガラス破りやドア破りが多いことが分かっています(※1)。犯行自体に時間がかかるため、空き巣犯は「誰にも見られずに済む」場所を選んで犯行に及ぶ傾向があります。
「人目につかない」「隠れやすい」場所が、空き巣犯には好都合なのです。
※1 「住まいる防犯110番 手口で見る侵入犯罪の脅威」より「侵入窃盗の侵入手口」(警視庁)
新築一戸建ては「空き巣が嫌がる家」に設計しよう
空き巣の被害に遭わないためには、戸締りなどの習慣による対策も重要ですが、やはり新築時に「防犯に強い家」を建てておくことが一番理想的です。
ここからは、空き巣に狙われにくい家を設計する上でのポイントを見ていきましょう。
「空き巣が嫌がる家」は人目につきやすい家
空き巣対策において最も重要なのは、「空き巣が嫌がる家」を建てることです。
科学警察研究所で2008年に行われた調査によれば、空き巣犯(窃盗犯)239名のうち24名(約10.0%)は「人通りが少ない」という理由で犯行場所を選んでいます。
他の理由を見ても、「空き巣犯が人目につきやすい状況」を作ることが、空き巣対策となると言えるでしょう。
出典: 「犯罪者の視点から見た防犯環境設計の有効性の検討」より「表4 犯行場所の選定理由」((社)日本都市計画学会)を加工して作成
新築時に人目に付きやすい設計を作る
空き巣犯を近づけさせないための対策をふまえた設計を、空き巣の侵入口である「窓」「出入口」「外回り」それぞれに取り入れましょう。
見通しの良い場所に窓を作る、敷地の奥に向かうまでに柵を作るなどの対応をしておくことで、音が鳴る、時間がかかるなど人目の付きやすさを作ることができます。
空き巣に対する防犯対策として、戸締りを忘れない、空き巣に遭遇したら大声で助けを求めるといったことは「事件対策」にはなります。しかし、誰でもうっかり戸締りを忘れることはありますし、いざというときにすぐに大声を上げることができる人は少ないものです。
だからこそ、空き巣犯に狙われにくい場所や状況を作る「機会対策」が、家づくりにおいて大事になります。
ポイントは、空き巣犯を近づけさせないための対策をふまえた設計を、窓や出入口に取り入れること。また建売住宅であっても、敷地の奥に向かうまでに柵を作る、窓に面格子を設置するなどできることがあります。
家を建てる前に!新築一戸建ての防犯対策を場所別に紹介
ここからは、新築時の防犯対策について、「窓」「出入口」「外回り」の3つの場所に分けてご紹介します。
【窓】一番侵入されやすい窓には3つの防犯対策
窓は空き巣に最も狙われやすい場所です。
「戸締りをすれば大丈夫!」ではなく、窓を壊して侵入しようとする空き巣犯に対してどう対策するのかを考えておく必要があります。
以下3つが対策方法です。
①CPマーク付きの窓を導入
「CPマーク」とは、防犯性能の高い建物部品に付けられるマークのことです(※2)。警察庁、国土交通省、経済産業省、建物部品関係の民間団体による官民合同会議による厳しい試験に合格した部品にのみ付けることができます。
対象となる建物部品は、鍵、シャッター、ドア、サッシ、ガラス、フィルムなど17種類、3611品目あり、いずれも破壊開始から侵入までに要する「抵抗時間」が5分以上であることが確認されたもの(※3)となっています。ただし、抵抗時間は各部品により異なりますので注意が必要です。
空き巣犯に狙われやすそうな人目の少ない場所の窓などはCPマーク認定のものにするなど、考えながら導入しましょう。
※2 「住まいる防犯110番 防犯性能の高い建物部品の開発・普及に関する官民合同会議」(警視庁)
※3 「防犯性能の高い建物部品目録」(公益財団法人 全国防犯協会連合会)
②見通しの良い場所に設置
窓の設置場所は、なるべく見通しの良い場所を選びましょう。
前述のとおり、空き巣犯は人目を避けようとするため、下の図のような道路から奥まった部分にある窓や、道路の反対側にある窓は狙われやすい傾向があります。狙われやすい場所にたくさんの窓を作らないよう注意が必要です。
③ルーバー窓には面格子を設置
住宅の窓には、引き違い窓や開き窓の他、ルーバー窓(角度を調節することで、隙間を開けたり閉じたりできる窓)があります。
ルーバー窓は家の採光や通風には便利ですが、外しやすいガラス板は空き巣犯にとっても侵入しやすい窓です。
対策としては、面格子の設置が有効です。面格子をルーパー窓の外に付けておけば、空き巣犯が窓を壊して侵入しようとするのを防ぐ抑止力となります。
また、面格子は家の設計後のリフォームとしても設置することができます。
【出入口】鍵の対策で簡単に侵入させない防犯対策
玄関や勝手口などの出入口は、頑丈なドアにすることはもちろん、鍵の対策を行いましょう。
以下4つが対策方法です。
①CPマーク付きのドアを導入
窓の対策でも紹介したCPマークですが、ドアに対しても導入されています。
CPマークのないドアに比べ値段は高くなりますが、こちらも場所に応じて導入しましょう。
②ピッキングや破壊に強いシリンダー錠を設置
ドアからの侵入の仕方としては、鍵穴に特殊工具を入れて解錠させるピッキングや、強引にドアに穴を開けて内側から鍵を開けるサムターン回しがあります。
鍵を破られないための備えとして、シリンダー錠のような形の複雑な鍵の導入を検討しましょう。
鍵が複雑になればなるほど、空き巣犯も侵入に時間がかかります。その間に誰かに見つかる、または空き巣犯自身が侵入を諦めることが予測できます。
③鍵は多めに設置
手慣れた空き巣犯でも、鍵が掛かっていれば開錠に時間がかかります。鍵が多いほど、空き巣犯の手間となり防犯対策となります。補助錠と呼ばれる鍵を玄関だけに限らず、窓などにも付けるようにしておくと有効的です。
④勝手口もツーロックに
玄関ドアは2つ以上鍵がある家はほとんどですが、勝手口は1つだけという家は多くあります。
そこが空き巣犯のターゲットになる可能性もあるので、勝手口も2つ以上鍵を付けておくとより強い防犯対策となるでしょう。
【外回り】侵入しにくい家回りで防犯対策
家の外回りの防犯対策により、そもそも家の窓やドアから空き巣犯を遠ざけることができます。
空き巣犯がどう侵入してくるかについて考え、対策をします。
①砂利敷にする
砂利の上を歩くと音がします。家に近づくまでに砂利を通らないといけないとなれば、「誰かに足音を聞かれるのではないか」と空き巣犯も不安になり、窓やドアまで近づきにくくなるでしょう。
②2階へ上がる足場を作らない
車が雨に濡れないようにと付けたガレージの屋根など、2階へ上がることができそうな足場がある場合、空き巣犯がそれをよじ登って2階に上がり、そこから侵入してくる可能性もあります。
家の外回りに2階へ上がる足場になる場所がないかを確認し、どうしてもの場合は忍び返しやセンサーアラームで対策しましょう。
③フェンスなどで立ち入りを制限
「家の敷地奥の見通しが良くない」「庭の窓からの侵入されるのでは」という場合に有効なのはフェンスです。
敷地奥に柵を作れば、空き巣犯も侵入しにくくなるでしょう。
家を建てた後の一戸建て防犯対策や防犯グッズを紹介
ここまで、新築時の対策についてお話ししましたが、ここからは家を建てた後の防犯対策や心構えをご紹介します。
建てた後もしっかりと対策をしましょう。
必ず鍵をかける
家の鍵については、以下の注意や習慣を忘れないようにしましょう。
- 少しの外出でも必ず施錠する
- 鍵は2つ以上かける
- 鍵を玄関周辺に隠さない
- 2階も鍵をかける
空き巣犯がいつあなたを見ているかわかりません。
「この人はいつもポストに鍵を隠している」「家の庭に出るときは鍵をしていない」など、空き巣犯が事前に観察している可能性があります。
音の鳴るものを置く
窓のそばに小物を置いておきましょう。
空き巣犯の侵入時、小物が落ちて音が鳴ることがあります。それで誰かが気付くこともあるでしょうし、空き巣犯を怯ませることもできます。
特に花瓶とお花を置くと、落ちたときに大きな音がして防犯になるだけでなく、家がお洒落にもなるので一石二鳥です。
窓を補強する
すでにある窓を補強し、侵入を難しくすることができます。
具体的には以下の道具で補強することができます。
- 窓用補助鍵
- 人感センサー
- 防犯フィルム
- シャッター
- 面格子
いずれも導入には時間や費用がかかりますが、人感センサーや防犯フィルムは比較的安価に購入できる防犯グッズです。
防犯意識を高く持ちしっかりとした防犯対策を
新築一戸建ての防犯対策についてまとめると、以下の4点について意識することが大切です。
- 一戸建ての家は空き巣の被害に遭いやすい
- 空き巣犯は「人の目につかない」「隠れやすい」場所を狙って犯行をする
- 一戸建ては新築時に空き巣に狙われにくい家を作ることが大事
- 窓、出入口、外回りのそれぞれの対策を検討する
新築時から防犯対策について考えておくと、その後の暮らしの安心・安全につながります。家を設計する段階から防犯意識を持ち、また日常生活でも施錠を怠らないなど、空き巣犯に狙われにくい家づくりをしていきましょう。
公開日:2022年03月28日
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石田高大
現代美術家。身体表現に着目しつつ現代アートの制作・発表を行っている。一方で、制作を通じて文化や社会、心理学の知識を活かしたフリーライターとして活動しており、防犯・防災や事件考察、犯罪心理の執筆も行っている。