アクアテラリウムをご存知でしょうか?
アクアテラリウムとは、陸地部分と水中部分が混在した動植物の飼育様式です。
自由度が高く水陸両用の動植物の飼育が楽しめるのが嬉しいポイントです。
お家時間が増えた今、癒しを与えてくれるアクアリウムは新しく始める趣味としてとてもおすすめです。
この記事では、そんなアクアテラリウムの始め方や作り方、飼育におすすめの生き物、またパルダリウムとの違いについてを解説していきます。
アクアテラリウムを始めようと検討している方はぜひ参考にしてください。
アクアテラリウムを始める前に
アクアテラリウムとは
近年では様々な飼育様式で動植物の飼育を楽しめるようになりましたが「アクアテラリウム」という言葉を聞いたことがあるでしょうか?
似たような言葉に「テラリウム」と「アクアリウム」がありますが、「テラリウム」が陸上生物の飼育様式であることに対して「アクアリウム」は水生生物の飼育様式を指します。
アクアテラリウムは、「テラリウム」と「アクアリウム」の2つを併せた水陸の飼育様式のことを言います。
水陸どちらもあるため、自然の一部を切り取ったような作品ができることが魅力であり、飼育できる生き物やアレンジに幅があることも面白さの1つです。
陸地と水辺の両方の飼育環境を楽しむことができるアクアテラリウムは、満足度も高くやりがいのある飼育様式なのです。
植物も一緒に育てることができるアクアテラリウムは、「手入れが大変なのでは?」と考える方もいるかもしれません。
しかし、小さな容器でも始めることができるので初心者でも挑戦しやすく、生活にも取り入れやすいでしょう。
パルダリウムとは
アクアテラリウムについて検索していると「パルダリウム」という言葉を目にする機会もあるかと思います。
パルダリウムはアクアテラリウムと異なり、魚などを飼育できるような水深を設けることはほとんどなく、その多くが熱帯雨林のような湿度の高い環境を再現しています。
また、アクアテラリウムと比較して、パルダリウムは熱帯植物をメインとすることが多いというのも特徴の1つです。湿気を好む生き物を飼育するのに適した環境のため、カエルやイモリなどの両生類を飼育する方もいます。
以上がパルダリウムに関する概要となりますが、今回の記事では初心者向けに手軽さを重視するため、アクアテラリウムに絞って作り方をご紹介できればと思います。
アクアテラリウムを作る前に確認したいこと
アクアテラリウムを始める際には、まずはどのようなサイズで始めたいか、育てたい植物や生き物などをピックアップして計画を立てましょう。
あらかじめ飼育スペースを決めて、アクアテラリウムの基盤をしっかりと作ることにより、その後のお手入れもしやすくなります。
飼育したい生き物が決まっている場合には、簡単な飼育方法を調べておくことも大切です。
また、初心者がアクアテラリウムのポイントとして押さえておくべきは、終生飼育をする覚悟を持って生き物を迎えるということです。
すべての生き物が1つ1つの命であるため、家族の一員として、一緒に楽しく過ごしましょう。
アクアテラリウム作りに必要なもの
アクアテラリウムのイメージを具体的に固めたら、いよいよ用品を揃えてレイアウトを作ります。立ち上げの瞬間はとても楽しく、これからアクアテラリウムを取り入れた生活にドキドキしますよね。
スムーズに立ち上げるためにも、アクアテラリウム作りに必要なものをまず解説していきます。どの用品もペットショップやホームセンター、ネットショップで購入可能です。用品は、水槽のサイズ感をイメージしてから購入するようにしましょう。
この後、実際にアクアテラリウムを作っていきますが、その際使用する用品はこちらです。水槽のサイズは20cm型です。
【用意するもの】
▼必要なもの
- 水槽
- 床材やソイル
- レイアウトの材料(石や流木)
- 植物
- 育てる生き物
- エサ
▼あると良いもの
- 照明
- ろ過材やろ過フィルター
- 育てる生き物によりヒーターや冷却ファン
▼レイアウトによって準備が必要なもの
- 水中ポンプ
- レイアウト材料用の接着剤 等
水槽
アクアテラリウムを作るための水槽は、設置するスペースに合ったサイズの頑丈で耐久性のあるものを準備しましょう。
初めてアクアテラリウムを作る場合には、20cm型の水槽がおすすめです。お手入れしやすい点と、飼育スペースのコンパクトさが魅力です。
飼育する生き物にあったサイズの容器を購入することも大切です。小さな熱帯魚であれば、インテリアにもなるおしゃれな形のガラス容器などを選んでも良いでしょう。
プラスチック水槽は安価で購入できるので、取り入れやすい点が魅力ですが、長い目で考えると重さがしっかりとあるガラス水槽がおすすめです。
2,000円ほどのものから数万円前後のものまで、種類は様々です。
床材やソイル
水辺と陸地の高低差を作るためには、床材が必要不可欠です。
植物が根を張りやすいように赤玉土やソイルを砂底に使うのがおすすめです。
2,000円~4,000円予算があれば、十分な床材を選ぶことができます。
レイアウトの材料(石や流木)
アクアテラリウムの肝心な土台となる流木や石は、全体のバランスを決める要になります。イメージに近いアクアテラリウムにするために、複数の流木や石を組み合わせて立てるのが良いでしょう。
1,000円前後で購入できます。
植物
アクアテラリウムのレイアウトに合う植物を購入します。
ホームセンターやペットショップで購入可能で、価格は1,000円~2,000円前後です。
初心者の方は、湿度の高い場所を好む水草や、丈夫な観葉植物などが育てやすいです。光が少なく多湿な場所でも育つ植物を植えるのがおすすめです。
たとえば、水草ならウィローモス、観葉植物ならワイヤープランツ、ポトスなどがいいでしょう。
育てる生き物
熱帯魚やカエルなどアクアテラリウムで飼育できる生き物は数種類いますが、初心者の方には、グッピーやメダカなど育てやすい魚がおすすめです。
それ以外にもおすすめの生き物がいますので、後ほど詳しくご紹介します。
エサ
生き物の飼育にはエサが欠かせません。育てる生き物の種類に合った、専用のエサを用意しましょう。口のサイズに合うもので、アカムシやミジンコなど、飽きないように数種類エサを用意するのがおすすめです。
1,000円あれば、十分なエサを購入できます。
照明
照明があると、アクアテラリウムをよりきれいに見せることができます。
2,000~3,000円前後で購入可能です。
ろ過材やろ過フィルター
ろ過材やろ過フィルターを水槽に取り付けることで水中の汚れや有害物質を取り除き、きれいな水を保つことができます。
生き物のお世話の負担を軽減するためにもあると便利なろ過材やろ過フィルターは、1,000円前後で購入可能です。
ヒーターや冷却ファン
温度管理が必須な生き物には、水温を一定に保つためのヒーターや冷却ファンを準備しましょう。
特に冬場の水温の低下は熱帯魚にダメージを与えてしまい、水槽全体がダメになってしまう危険もあります。魚が火傷しないように、カバー付きのヒーターを導入すると良いです。
およその価格は、2,000円〜5,000円前後です。
レイアウトによって準備が必要なもの
レイアウトによって準備が必要な下記の用品もホームセンターで購入可能です。
ネットショップでも豊富な種類のアイテムが販売されていますが、質感やイメージが掴みづらいため、初心者の方は実店舗で購入することをおすすめします。
下記のうち、水中ポンプやレイアウトの土台になる材料は2,000円前後、接着剤は1,000円弱で購入できます。
- 水中ポンプ
- レイアウト材料の接着剤 等
アクアテラリウムの作り方
必要なものが集まったら、早速アクアテラリウムを組み立てていきましょう。
具体的なレイアウトがしっかりと決まっていれば、立ち上げはそこまで難しくありません。
しかし、順番を間違えてしまうと最初からやり直す必要が出てくるため順番通りにアクアテラリウムを作りましょう。
【手順】
- レイアウトを決める
- 材料を使って組み立てる
- 植物を植える
- 水を入れる
- 生き物を入れる
1.レイアウトを決める
理想のレイアウトを作るために、購入したものをまずどのように配置するか考えます。
写真のように、流木や石、土台やフィルターを試しに配置してみましょう。
アクアテラリウムは初めが肝心なため、レイアウトは細かい部分まで決めておくのが良いでしょう。レイアウトを決めるときには植物同士の相性や、生き物が快適に生活できるかどうかも視野に入れてレイアウトを考えます。
ある程度イメージができたら、図などに書き留めておき、後に見返すようにするとスムーズに組み立てることができます。
2.材料を使って組み立てる
レイアウトが決まったら、実際に材料を使って組み立てていきます。今回はこちらの材料を使います。
土台となる砂利や土を水槽に敷いていきますが、この段階で高低差を付けるようにすると、立体的なアクアテラリウムに仕上がります。
水部分も作りやすくなるので、高低差を意識して砂底を敷くのが良いでしょう。
最初は土台となる砂利や土を薄く敷いて、流木や石などを設置してから、埋めるように砂利や土を足し、土台を作ります。
水槽の奥に流木や石を置いて、植物が植えやすい配置を意識するとスムーズです。
土台の位置が決まったら、砂利や土を足して陸地を作ります。
後方の隙間が空きすぎるとバランスが悪くなるので、水槽の隙間が空きすぎないように注意します。
必要に応じて、ろ過フィルターの場所も考えましょう。
ろ過フィルターが露出してしまうと見た目も悪くなってしまい、人工物感が出てしまいます。自然な状態に近づけるために、ろ過フィルターは底面フィルターの利用やカバーを付けてカモフラージュする、または以下の写真のように、岩や陸地の後ろに隠すのがおすすめです。
ここまで組み立て終わった段階がこちらです。
3.植物を植える
次に植物を植えていきます。
陸地で苔類をレイアウトする場合には、乾燥しないように定期的に霧吹きなどで水分を含ませると見栄えが良くなりますよ。
石の上に植物を載せる場合のポイントは、植物が定着するようにきちんと固定することです。定期的にトリミングを行い、形を整えていくことが重要です。安定感がないと成長するにつれて植物が石から落ちてしまい、景観を損なう要因にもなります。
植物の植える位置は、中央に寄せるのか、脇に寄せるのか、レイアウトを決めた時点の構図に従いましょう。大きく伸びる植物はその成長後の姿もイメ―ジしつつ、植える位置を決めます。
植物も植え終わると、このようになりました。
4.水を入れる
水は、カルキ抜きした水道水を使用します。
カルキ抜きはペットショップなどで手に入るアクアリウム用のものを使用しましょう。
また、水を入れる時は床材が巻き上がらないように静かに入れましょう。
水を入れてろ過フィルターを回し、できれば3日〜1週間ぐらい水を循環させてから生き物を入れましょう。バクテリアが発生し、ろ過フィルターに定着することで水質が安定します。
5.生き物を入れる
生き物は最後に入れるようにしましょう。
熱帯魚はいきなり入れてしまうと、水温の違いにびっくりしてしまいショック死する危険もあるため、2〜3時間持ち帰った袋の状態で、水槽に浮かべておき、水温を同じにして慣らしてから水槽に入れます。
以上でアクアテラリウムの完成です。今回作ったアクアテラリウムは、このようになりました。
※以下の写真は生き物を入れる前に撮影したものです。
次は、完成したアクアテラリウムのお手入れのポイントを解説していきます。
アクアテラリウムのお手入れのポイントは?
アクアテラリウムでの飼育は、生き物の種類により細かいお手入れのポイントは異なりますが、水生生物は水質の維持が要になります。
少なくとも2週間に1回は水槽の3分の1の水を新しいものに交換しましょう。
水換えの際に全量新しいものに交換してしまいがちですが、水質がガラリと変わると、生き物がびっくりしてしまい突然死の原因にもなります。
また、水温が急激に変化しないように冷水やお湯などを水槽に入れるのはやめましょう。
水を綺麗に保つポイントは、エサの残りカスをその都度取り除くようにすることです。
水草は枯れたまま放置せずに、ハサミで枯れた部分をトリミングして手入れしましょう。
陸地部分の植物に関しても、古い葉はトリミングしてメンテナンスします。
その他、陸地部分にウィローモスやカボンバなどの水草を植えている場合、霧吹きで定期的に水を含ませて乾燥しないようにすることも大切です。
アクアテラリウムにおすすめの生き物3選
初心者の方におすすめのアクアテラリウムで育てられる生き物と簡単な特徴をご紹介します。どんな生き物が良いか考えている方は、参考にしてみてくださいね。
①熱帯魚
アクアテラリウムと相性が良い熱帯魚はカラフルな身体の魚も多く、見栄えがする生き物です。
ネオンテトラなどは成長しても3cm前後にしかならないため、30cmほどの小型水槽でも飼育可能です飼育可能です。そのほかメダカなど小型の魚は、小さいアクアテラリウムの水槽でも飼育しやすく、ちょこんと泳いでいる姿は可愛らしいですよ。
金魚の飼育も不可能ではありませんが、植物を食べてしまい水槽のレイアウトを壊してしまうこともあるので、小型の魚がおすすめです。
②カエル
カエルは湿度の高い環境を好み、アクアテラリウムの植物とも相性が良いため、馴染みやすい生き物です。初心者にはアマガエルがおすすめです。
カエルをアクアテラリウムで飼育する場合には、高さのある水槽を選ぶと良いでしょう。
なお、カエルは変温動物のため、紫外線ライトなどで身体を温めてあげる必要があります。爬虫類用のパネルヒーターや照明器具を準備しましょう。
アクアテラリウムでカエルを上手に飼育するポイントは、カエル中心に飼育環境を整えて水槽を組み立てることです。カエルが好む植物を入れてあげましょう。
③アカハライモリ
アカハライモリは陸地だけでなく、水の中に潜ったり水中にいることも多い生き物です。初心者にも飼育しやすく、値段も安価です。
人にも慣れやすく、慣れてくるとピンセット越しにエサを食べるので愛着が湧きます。
湿度の高い環境を好むため、苔類とも相性が良く大切に飼育すれば5年前後生きます。
少し変わった生き物をアクアテラリウムで飼育したい方にもおすすめです。
アクアテラリウムはカスタマイズできるのが魅力
ここまで、初心者の方向けにアクアテラリウムの作り方とおすすめの生き物についてご紹介しました。
アクアテラリウムは、陸地部分と水中部分の飼育様式を一度に楽しめ、自分の好みにカスタマイズできるところが魅力です。
始める時には、1つの作品として自然の一部を切り取ったような水槽を作り上げる楽しみがあります。
そして育てられる生き物は、陸上生物・水生生物・植物といったように多種多様であり、自分に合った動植物を選べるのも魅力の1つです。
アクアテラリウム作りに必要な材料はペットショップやホームセンター、ネットショップで手軽に揃えることができ、また小さな容器でも始めることができるので、初心者でも挑戦しやすいです。
新しい趣味を探している方やアクアリウムをカスタマイズしたい方は、本記事を参考にぜひ実践してみてください。
公開日:2021年03月25日
更新日:
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國澤莉沙
犬の専門学校を卒業後、犬のテーマパークにて飼育員を経験。その後、ペットショップにて熱帯魚や金魚のお世話をしていました。現在は育児をしながらペット系の記事を中心に執筆活動をしています。 保有資格:愛玩動物飼養管理士1級、小動物看護士、ホステリックケアカウンセラー等