スマイルすまいの見つけ方 第11話
暮らし方や価値観が異なるように、理想の住まいも人それぞれです。心地よく快適に過ごせる家を探しているスマイル一家。優しい会社員のパパさんとすてきな暮らしに憧れる在宅勤務のママさん、しっかりものの保育園児タッくんに、愛犬ワンダが加わった仲良し家族です。果たして、家族みんなで幸せに暮らせる住まいを見つけることはできるのでしょうか。
頭金ゼロでも本当に家が買えるの?
マイホーム購入に向けて前進あるのみ、のスマイル一家。新聞に折り込まれてくるマンションや一戸建ての広告チェックも怠りません。これまでは最寄り駅や間取りばかりが気になっていたのですが、今の関心はもっぱら“価格”。購入した場合の月々のローン返済額の例が載っている場合は、その欄も熟読するようになりました。
ママさんの最近のマンション資金についての疑問の一つは「頭金ゼロの場合っていう返済例があるけど、本当に頭金なしでマイホームの購入ができるのかしら」ということです。頭金がゼロで済むなら、300万円の貯金を崩さずに済みます。
「一人で悩んでいても仕方ないわ。プロに聞いてみましょう!」と、以前親切にモデルルームを案内してくれた不動産会社の営業マン・Tさんに聞いてみることに。
「実際に頭金ゼロで購入できる場合もありますよ」と、Tさん。「でも、当然ながらその分ローン額が増えて月々の返済額は多くなります。ローンの返済は長期間にわたるものです。今後例えばお子さんが習い事を始めたり塾に行くことになったりなど出費が増えることも予想されるので、なるべく余裕のある返済額に抑えておく方が安心です。そのためには、頭金は少しでも多くご用意された方がいいと思います」
親にも相談してみよう
「やっぱりそうなのね」と、プロの話を聞いて納得のママさん。Tさんからはさらに、「目安としては物件価格の1割以上の頭金を用意するといいですよ」と教えてもらいました。「住宅金融支援機構のフラット35を利用する場合は、頭金が1割未満か1割以上かで金利が年0.5%ほど違ってきますからね」
早速パパさんにも伝えます。「じゃあ、頭金の目標額は最低でも1割にしよう!」
とはいえ、300万円の貯金を丸ごと頭金にできるわけではありません。「不動産購入時には諸費用がかかる」ということも、このところ勉強熱心なママさんは知っています。
「頭金と諸費用をあわせて“自己資金”っていう言い方をするみたい。この自己資金のうち諸費用には、税金や保険料、登記費用、仲介手数料、引っ越し代などもかかって、だいたい物件価格の5~8%くらいにはなるみたいよ」
ということは……、とため息をつく二人。「もうしばらくはマイホームは無理かしら……」
その夜のことです。「親に相談してみないか?」とパパさんが言い出しました。「実は前から、そろそろ家を買ったらどうかって言われていたんだ」と。「もしかしたら、頭金の一部は援助してくれるかもしれないよ」
予算が見えてきた!
パパさん、ママさんそれぞれの親に「タッくんが小学校入学するまでにマイホームを構えたい」という相談をしたところ、うれしいことに両家とももろ手を挙げて大賛成。「かわいいタッくんのためだものね」
だけど、とパパさんのお父さんが教えてくれました。「親から子への援助でも、いくらか以上になると税金がかかるはずだから、ちょっと調べてごらん」
早速調べてみると、「贈与税」という税金がかかることが分かりました。通常は年間110万円を超えると発生します。
「でも、住宅取得のための資金援助については、非課税の特例が適用される場合もあるらしいわ!」
〇直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の非課税限度額※
~平成32年3月31日
1200万円
平成32年4月~平成33年3月31日
1000万円
平成33年4月~平成33年12月31日
800万円
※省エネ、耐震バリアフリーの住宅用家屋の場合
以上の適用には、面積や建築年数などの条件以外にもさまざまな必要条件があります。国税庁のHPなどで事前に確認しておきましょう。
(平成29年6月調べ)
両親たちに確認してみると、援助額は両家ともに「300万円くらい」とのこと。「じゃあ、贈与税のことは気にしなくてよさそうね!」
これで、合わせて900万円の自己資金ができました。「このうち200万円くらいは諸費用のために置いておいて、700万円を頭金で考えよう」。ローンの返済額は今の家賃を超えないようにしたいので、月額8万円以内。「これでいくらの物件が買えるのかしら?」
〇購入予算の概算
頭金 700万円
住宅ローン借り入れ可能額 約2600万円※
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計3300万円
※ローン借り入れの条件設定
・元利均等返済による計算
・毎月の返済額8万円
・返済期間35年
・フラット35 固定金利1.5%
・ボーナス払いなし
ようやく具体的な数字が見えてきました! スマイル一家のマイホーム購入予算は3300万円が一つの目安となりそうです。
愛犬ワンダのワン!ダフル アドバイス
「予算決めには、確かな数字を積み重ねようワン!」
マイホームを購入する際は「えいやっ」の決断が一回あればできるけれど、買った後、長ければ35年間ローン返済が続くことを忘れてはいけないワン。予算を決める際には35年間ずっと無理なく支払えるか、という判断が絶対に必要になるワン。月々の返済の目安は、現在の家賃を参考に、それで借りられる上限額に頭金をプラスすれば、予算のラインが見えてくるワン!
公開日:2017年07月31日
監修:中原茂
中原総合法律事務所、代表弁護士。CFP®認定者、ファイナンシャル・プランニング技能検定1級。1966年鹿児島県生まれ、東京大学法学部卒業後、国内損害保険会社に勤務、資産運用部門などでの勤務を経て、99年に法曹界に転身。2005年に、中原総合法律事務所を設立。また01年よりCFP認定者としても登録し、弁護士としての専門性とCFP認定者としての視点からのアドバイスが好評を得ている。マンション管理士資格を取得し、住宅分野の中でも特にマンション管理の分野の専門性は高い。 各種団体での講演、雑誌や書籍の執筆・執筆協力も多数。『老後はコワイ!―お金と財産を守る本―』(主婦と生活社、執筆協力)、『マンション法実務ハンドブック』(民事法研究会、共同執筆)など。神奈川県弁護士会紛争解決センター仲裁人候補者、社会福祉法人評議員、投資会社の社外取締役。
不動産監修:中村嘉宏
1959年、熊本県生まれ。中央大学法学部卒業後、株式会社リクルート入社。同社関連の不動産会社、不動産金融会社を経て92年株式会社イー・エム・ピーを設立。同社代表取締役。不動産、金融の幅広い知識と経験、弁護士や税理士等との強力なネットワークを基に、不動産戦略コンサルタントとして不動産資産家の相続対策や投資戦略などのプライベート・アセットマネジメント業務、企業の不動産事業構築などのアドバイス業務を行っている。事業投資、M&A、事業承継の専門家集団であるMMプリンシパルインベストメント株式会社取締役。公認不動産コンサルティングマスター 相続対策専門士、ビル経営管理士、宅地建物取引士。著書『不動産投資 実践ガイド』(PHP研究所)
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スマイルすまい編集部
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