住宅購入資金。親からお金をもらう?借りる?

住宅購入資金。親からお金をもらう?借りる?

新屋 真摘

家を買いたいと思うものの予算的に厳しいとき、もしご両親の援助が得られるならば、素直に頼ってしまうのもいい方法です。頭金が多く出せれば、手が届く物件の範囲も広がりますし、住宅ローンを借りる金額も少なくて済むこともあります。
ご両親からの援助には「もらう」、つまり贈与を受けるほかに、「借りる」という方法もあります。では、もらう場合と借りる場合のルールや注意点をご説明しましょう。

「もらう」:贈与税がかからない「枠」があります。

まずは「もらう」について考えてみましょう。お金をもらうことを「贈与」と言います。いくら自分の親からだと言っても、まとまったお金をもらったらその金額に応じた贈与税を支払わなければなりません。
しかし、贈与には1年間で110万円の非課税枠が認められているので、年間110万円までは、税金の心配をすることなくお金をもらうことができます。よく、もし2人からお金をもらったら110万×2=220万円まで非課税になると思い込んでいる方もいますが、複数人から贈与を受けたとしても、合計して110万円までなのでご注意を。
これに加えて、現在、住宅購入資金のための贈与には大幅な非課税措置が実施されています。具体的には、ご両親や祖父母から住宅購入のための費用を援助してもらう場合は、2020年3月までなら700万円、その後は段階的に引き下げられ、2021年3月までは500万円、2021年12月までは300万円を非課税で受け取ることができます。消費税10%適用の物件はさらに大型の贈与が可能です。2020年3月までなら2,500万円、その後は段階的に引き下げられ、2021年3月までは1,000万円、2021年12月までは700万円を非課税で受け取ることができます。
さらに、購入する物件が環境に配慮された優良な住宅など一定の基準をクリアした場合には、500万円の上乗せが認められています。つまり、今なら冒頭の110万円の非課税枠と合わせて、最大で1,310万円まで非課税で贈与を受けることができ、これを頭金にすることができます。
この制度を使うためには、贈与を受けた年の翌年2月1日から3月15日までの間に、税務署に申告が必要です。ちなみに、あげる側は何歳でも構いませんが、もらう側は「20歳以上」「もらった年の年収が2,000万円以下」などの条件があります。また、贈与を受けた年の翌年の3月15日までに住宅を取得する必要もあるので、物件探しも含めてきちんと計画を立ててから贈与を受けるとよいでしょう。

「借りる」:贈与とみなされないようにご注意を。

次に借りる場合を考えてみましょう。一般の金融機関で住宅ローンを借りる場合はローンの審査がありますから、自営業や転職して間もない人や、健康上の問題で団体信用生命保険(団信)に加入できない人など、金融機関で借りにくい人にとっては、ご両親からお金を借りられるのはとてもありがたい話です。
ただし、親子間のお金の貸し借りだからといって返済をあいまいにしてしまうと、「贈与」とみなされて課税されかねません。そうならないためには、返済金額、返済期間、金利、返済方法を明記した借用証書を作成して双方が署名捺印し、形だけではなくそれにのっとって適切に返済していく必要があります。たとえ親子でも、あいまいにしてはいけないのです。
また金利についても、極端に安くしてはこれもまた贈与と言われかねないため、世間並みの水準(各金融機関の住宅ローン金利の中で最低の金利くらい)で設定する必要があります。返済方法も、手渡しは避けて、銀行振込を利用するようにしましょう。なお、お金を貸したご両親が受け取った利息は「雑所得」として申告の対象になることも覚えておきましょう。

なかには「借りる」ほうが向いている場合も。

当たり前のことですが、子どもにしてみれば借りるよりももらったほうが助かります。前述の非課税枠もありますし、ご両親の気持ちとしても、貸すよりもあげたいと思われる方が多いかもしれません。
そうは言っても、住宅取得のための贈与には、満たさなければいけないいくつかの基準(20歳以上、年収2,000万円以下など)がありますので、それをクリアできない場合や、前述した非課税枠を超えた多額の援助を期待するなら、借りるしかありません。
また、借りたほうがいいケースもあります。たとえば、ご両親の老後資金にそれほどの余裕がない場合は、返済することがご両親の老後の安心材料になります。なかには「思い切った援助をしたおかげで自分たちの老後資金が足りなくなったから、老後の面倒を見てくれ」と言われても困ってしまう、という子どもの本音の部分で借りることにした方もいらっしゃいます。
また、兄弟のうち誰か一人が住宅購入費用を援助してもらったことで兄弟間の差が付いてしまい、遺産相続の際にもめてしまうケースもあるとか。後々のトラブルになるくらいなら、安易に贈与を受けずに、いったんは用立ててもらっても、返済していくという考え方もあるでしょう。兄弟でよく相談することも大切です。

まとめ

もらう場合も借りる場合も、 親子だからといってお金のやりとりをあいまいにするのは禁物です。贈与に関する制度をよく理解して、両親だけでなくご兄弟ともよく話し合いながら決めるようにしましょう。

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公開日:2019年02月21日

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新屋 真摘

ファイナンシャルプランナー(CFP 認定者)、ガイア株式会社所属。http://www.gaiainc.jp/ 大手生命保険会社を経て「正しいマネーセンスを身につけてお金に振り回されない人生を送ってもらうためのお手伝いがしたい」という想いからファイナンシャルプランナーを目指す。2005 年に独立系FP オフィスを設立。 2014 年にガイア株式会社へ。 『一番トクする 住宅ローンがわかる本』(成美堂出版)、『やさしい保険の本』(オレンジページ)、『ママと子どものお金の話』(サンクチュアリ出版)、『シンプルにお金を貯める・増やす・使う。』(クロスメディア・パブリッシング)、『マンガと図解でラクラクわかる はじめての資産運用』(成美堂出版)など著書・監修多数。

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